たとえばあなたが、見ず知らずの人に

知らない間に、どこか知らない国に

連れてこられたとしましょう。

 

見たことのない景色、見たことのない建物。

自分の周りに人が行き来して、

にぎやかなのだけど、

話している言葉が分からない。

 

そんな環境に置かれたとき、

あなたはどう振る舞いますか。

 

「認知症」というのは、

「認知障害(状況を認知する

ことができない)」と考えると、

唐突に始めたさっきの例えば話が

ヒントになるのではないでしょうか。

認知症は脳の器質的な

変化による病気が根にあるのですが、

それに伴い、自分の振舞い方が分からなくなること、

ということになろうかと思います。

 

認知症は、単なる物忘れのことを

言っているわけではありません。

ある程度記憶が保たれているのに

問題とされる行動をとる人もいますよね。

 

認知心理学では、「認知」の意味を、

「認識すること・理解すること・判断すること」

と定義していて、

認知障害とは、それらのいずれか、

あるいはすべてができない

(つまり障害されている)

ことと捉えてみましょう。

 

百歳の美しい脳」という有名な本には、

多くの修道院のシスター達の死後、

脳を解剖すると、アルツハイマー病の

重症度と認知症症状の関係は

比例しない、と結論付けています。

 

病気と、物事を認知する力と、認知障害の程度は

比例しないと私も思います。

 

だから、認知症症状があるからと言って

医療機関での治療のみが効果を上げられる

わけはない、と思います。

 

1980年代にスウェーデンで始まった

認知症グループホームのケアが

認知症の人たちの治療に大きく貢献した

という事実が、それを示していると思います。