「自立」・「生活の質」に関する
アンケートを実施した結果、
私はこんなふうに結果を整理しました。
人間には体があり、
心をもっており、
誰かとつながって生きている。
これを竹内孝仁先生は、
「人間は、【身体】・【精神】・【社会】の
統合体として存在している」
と表現されています。
要介護者は3つのうち、
【身体】に不自由が生じているので、
損なった機能を回復させて、
再び自分で生活ができるようになる
ことを目指していくのです。
これを私たちは「自立支援」と
呼んでいる。
実際にアンケートでは、
「自立」といえば【身体】の自立
との回答が多く寄せられました。
ところが、回復不可能な
身体になってしまっている人も
残念なことですが、大勢います。
人間はいつか死んでしまうもの。
いつまでも元気な体でいれるわけでは
ありません。
いつまでも生き続けたい、という欲は
ある時点から悲惨なことに
転換してしまうこともあります。
たとえば、無謀な延命治療とか、
回復見込みのない人への
リハビリ(機能訓練)とかです。
「元気な身体」は
「幸せな生活」への
絶対条件なのだろうか。
「生活の質」という言葉を考える時、
【社会】性の回復と答えられた方が
多数いました。
【社会】性を回復させることが
「生活の質」に大きく影響する、
という結果でした。
誰かとつながっていたい、
というのも人間の欲求だと思います。
一日中誰とも話さなかった。
メールやLineも来なかった。
「おまえ、友達少ないな」と言われる。
…こういう事実は凹む。
誰ともつながりがなく生活する、
というのは相当辛いことです。
ご近所づきあいはわずらわしくても
SNSは爆発的に普及している。
【身体】が健康でないと、
【社会】性が制限されることは
当然あることです。
出かけるときに誰かに連れて行って
もらわなければいけない。
自分が好きなときに好きな人に
会いに行くことができない。
だから、
【身体】が良い状態であることは
とても大切なこと。
しかし、だからといって、
【社会】性を持つためには
絶対に必要なことではない。
誰かに連れてってもらったら
良いわけですから。
死ぬときもそう。
見送ってくれる家族や友人、
惜しまれながら逝くことは
決して不幸せなことではありません。
誰かとつながっていることは
人間を幸せにしてくれるはずです。
それが「生活の質」につながるのです。
つまり、「【身体】の自立」は、
絶対条件ではなく、
【社会】性の回復への
必要条件のひとつである。
ということになると思います。