さあ、試合再開です。
2回表、ノーアウトランナー3塁。
試合でのピッチャー経験のない長男が
いっちょまえにセットポジションから
第1球を投げました。
ゆる~い、インコースのストレート。
私は左の軸足に重心をためて
右足を踏み出しながら体の軸を
おもいっきり回転させました。
「バン!」
思いっきり引っぱたいた打球は、
鈍い音を残して一塁コーチの手前を飛び、
ファールグラウンドのフェンスに
ノーバウンドであたりました。
(おお~~)という、かすかなざわめきが
私の耳に届きました。
(ちょっとタイミングが速かったな)
ゆるい球にうまく合わせたつもりでしたが、
バットの先っぽにあたった手の感触を確かめつつ、
バッターボックスを外して2度ほど素振りを
しました。
もう一度、足の位置を決めて
2球目を待ちます。
さあ、長男が投げた2球目。
さっきと同じコースにきた!
(ふんっ!)
「パン!!!」
という乾いた音を発して、
真芯でとらえた打球は
真っ直ぐライトポールに向かって
いい角度で飛んでいきました。
ライト線に沿って真っ直ぐ伸びていく打球は
スローモーションで見えました。
一塁ベースにむかって走りながらの
数秒間でしたが、至福の時でした。
(いった~~!いや、届かんかな?)
(ファールかな?ファールのほうがええな)と
野球小僧と子供の親の2つの感情をかかえながら、
はるか先へ飛んでいくボールの行方を
目で追っていました。
打球はフェンスの手前で
ポ~~ン、と跳ねました。
一塁塁審が後ろ向きで両手を大きく広げて
ファールのポーズをとりました。
「おお~~」。
さっきのざわめきが少し大きく聞こえました。
「ええぞ、ええぞ!」と
オヤジベンチから声がかかります。
私は(ふ~っ)とひと息ついて、
きびすを返しました。
ヘルメットを脱いで頭から噴き出る汗を
Tシャツの袖でぬぐいました。
その時、長男はどんな顔をしていたか
確認をしていません。
そんな余裕はありませんでした。
もう、私はふたたび
親モードから
野球小僧モードになって
(早く次の球を打ちたい)
衝動にかられていたのです。
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