(前回は>>>こちら。)


それではさっそく引用します。


内田氏が受けた

歯科治療の

お話です


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(内田樹)

でも、そこに行ってすぐに、「この人は名医だ」って思いました。それまで、どんな歯科医に行っても、まず歯医者は僕を叱るんです。「ブラッシングが足りない、食生活が悪い、生活習慣が悪い、歯がこんなになったのは全部おまえの責任だ」、と。おっしゃるとおりなんですけど、そういうふうに行くたびに叱られると、こちらもだんだん気が滅入ってくる。やっぱり叱られると、免疫力とか下がりますよ。それで足が遠のくわけですよね。(中略)でも、E阪先生はね、全然叱らないの。歯を見て、「あらー、これは大変なことになっていますよ。がんばって闘いましょうね」っていうふうにおっしゃる。要するに「歯を悪くする邪悪な霊」みたいなものを想定して、僕が無辜(むこ)なる被害者で、E阪先生と2人で開くと闘うっていう、そういう物語に巻き込んでしまうんです。僕の生活習慣とか、ブラッシング不足とか、そういうことは一切とがめないんですよ。


(釈徹宗)

ま、さ、に、民間宗教者ですね。


(内田樹)

そう、まさに民間宗教者!とにかく、この先生の治療だとこちらが精神的に非常に楽なわけです。ものすごく痛くなって行ったときでも、「あらら、とんでもなくなっていますねえ、痛かったでしょう」「やられちゃいましたね」とかね。けっして僕を叱らない。(中略)釈先生のおっしゃった拝み屋さんのところに来る人も同じですね。「あなたの不幸はあなたの生き方が悪いせいだ」とみんなから言われてきて、本人もそのことにはうすうす気づいている。

でも、言われて直せるようなら、「生活習慣」なんて言わない。だから物語的に生活を再演してみせる。「あなたは悪くない。外部に悪があるから、それを何とか押さえ込みましょう」という話型に落とし込む。


(『現代霊性論』P77~P78 内田樹、釈徹宗)


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はてさて、内田樹先生は、

人間味あふれる先生ですね。


虫歯ができたことは、日ごろの

自分の怠慢が招いたことだと

重々承知している。


承知しているけれども

だからといって、歯科医の

先生にキズに塩を塗るような

追い打ちをかけられるのはたまらない

ということを告白されているのですね。




次回、また認知症の話に戻ります。


(つづく)



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