「そ、そうなんですか…」

私は、あ然とした。

(そりゃ連れて帰られんわな)

本当にあ然とした。




自宅でカーペットにひっかかり、

しりもちをついたおばあさん。

そのあと、動けなくなって

救急車で整形外科病院に入院。

翌日の検査で太ももの付け根が

骨折していることが分かった。



さっそく、手術がおこなわれ、2ヶ月。

一本杖をついて、だが、見守り程度で

歩けるくらいに回復した。



病院から退院にむけての会議を

打診され、その日を迎えたが、

長男は「もう少し歩けるように

なってもらわないと…」と言う。


「それでは、回復期の病院で

リハビリをしてもらいましょう」と

転院することになった。


それから、さらに2ヶ月。

「そろそろ退院にむけての会議を」

ということで、長男さんをまじえて

退院後のプランを話し合うことになった。



しかし、会議が終わってからも

長男は退院を渋っている。

「家に連れて帰っても

見れるだろうか、田中さん」。


「大丈夫だと思いますよ、

入院される前と同じくらい

歩けるようになっておられますし」

というが、やれトイレが心配だとか、

なんだかんだと話す長男さん。


「トイレ。ポータブルトイレも

ありますよ。それを部屋に置いて…」

と私が言うと、すぐに

「その部屋のことだけどな、

おばあさんの部屋、片付けて

しまってな…」と言われた。


「あの部屋、ちらかっとったが。

(もう帰えれんな)と思って、

片付けてしまって。」




聞くと、

(片付ける)というレベルを超えて

おばあさんのものをすべて

(捨ててしまっている)。


入院してから1週間ほどで

イスやテーブル、タンス、

おばあさんが使っていた

部屋のものを全部処分して

しまったのだそうだ。



「でも、おばあさん、家に

帰りたがってたのに。

「片付けた」って、正直に

言うことはできませんか?」

という私の言葉も、長男さんには

届かないようだ。



たまたま骨折して入院してしまった

おばあさんは、ふたたび家の敷居をまたぐ

ことができず、施設へ入所することになった。




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