現在のように、「自立支援」というような
理念が、まだ一般的に浸透しておらず、
がむしゃらに行われていた当時の介護。
介護保険が始まって以来、現在も
「自立支援介護ができていない」と
言われているところですが、
それでも、私が社会人になりたての
ころよりは、進化しているようです。
元上司の話を聞いてそう思いました。
介護保険が始まってから、
介護というものが専門性を
帯びてきています。
介護保険以前なら、脳卒中で倒れて
寝たきりになって、そのまま衰弱して
亡くなってしまう、ということが
当たり前のようにありました。
私が中学生の頃に亡くなった祖母は
倒れてから、たった2ヶ月の命でした。
しかし、現在は介護保険が市民権を
得て、みんなが上手に活用すれば、
以前は亡くなっていたようなケースも
生き延びられるようになりました。
これが自立支援介護の成功例か。
そして、介護に縛り付けられていた
介護者たちの多くが、介護保険の
おかげで解放される、という構図でした。
でも、介護保険で救われているはずの
介護者にとって、そうではない事情が
このように、ときどき顔を見せます。
そのひとりが元上司です。
専門性の高い介護が在宅生活の
一部を担っても、24時間すべてを
カバーすることは困難です。
プロの介護が届かない時間帯は
やはり家族の介護が行われている
現実は変わりません。
そうでないと利用者の在宅生活は
支えられません。
真面目な介護者であれば、
専門職から無言の「私たちが
これだけやっているんだから
家族もしっかり介護してよ」という
プレッシャーを受けているかもしれない、
と想像しました、上司の話を聞いて。
こうならないためには、介護者が
介護しなくてもよいほど、ご本人の
自立を高めるか、介護者へ
無言のプレッシャーをかけないように
介護の苦労を聞いたり、ねぎらったり、と
ご本人以上にケアしてさし上げることが
必要なんだな、と思いました。
「家では看られない。施設に入れたい」。
私がケアマネを始めて11年。
この言葉を残して別れた家族の中には、
元上司のような気持ちにさせてしまった
ケースがあったかもしれない…と
顧みました。
自立支援介護と家族へのケア。
ご本人の在宅生活を支えるには
ご本人をとりまくすべてのことに
心を配らなければいけないわけですね。
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