先日、妻がインフルエンザにかかって大変だったお話
をしたんですが、このとき、生物学者である福岡伸一先生が言われる「動的平衡」という言葉を思い出しました。「『動的平衡』とは、この世のすべてのことに通じるなあ」と思いました。「動的平衡」って、すごくおもしろい話だと思うので、今回みなさんにも紹介したいと思います。「あたりまえじゃん!」って思う人もいるかもしれませんが、そこは、ほら。目をつぶっていただければ(笑)
福岡伸一先生は、『動的平衡』という、そのまんまのタイトルの著書を書かれているぐらい、「動的平衡」というキーワードで生物を語られます。動的平衡とは、「動きながら(動的)、バランスを保つ(平衡)」ということです。そこに生物としての形が変わらずに、あるように見えても、中身は少しずつ変わっていきつつ、形は保たれている。
先生は分子生物学が専門なので、体の細胞を取り上げて話を進められます。
かなり昔の研究になるかと思いますが、マウスが食べた食べ物の栄養は、体の中でどうなっていくのか、という実験のお話です。食べ物の栄養は、消費されて捨てられると思っていたところ、体の至るところに点々と残っていることが分かりました。
そして、体に取り込まれた分だけ細胞が増えたとか大きくなったかというと、そうではなく、体に残った分だけ、古いものが外に捨てられた、ということ。つまり、入れ替わったということです。また、栄養が入ったから壊すのではなく、はじめに壊してから、新しい栄養(分子)を取り入れているのだそうです。
ここで、「食事を食べないでダイエットをする」危険性が分かりますよね。体は毎日自分を壊していますから、その分、補充しないといけないわけです^^
これを人間の細胞だけを見る視点から、広く視野を広げると、これがまたおもしろい。
そもそも、人間の成分は水素、酸素、炭素、窒素ぐらいでできてしまうのだそうです。この成分は、他の動物でもそうですし、植物でもそうです。
動物が死ぬと、最終的には二酸化炭素と水とアンモニアぐらいになり、それが土に帰ったり、海に戻ったりします。それが、やがて植物の栄養になっていき、それをまた、動物が食べて栄養にする、と。
これは生き物だけの話ではないそうです。石だってそうだし、地球自体がそうですから。何万年、何億年もの時間で見たら、いまの私の脳の一部は、近くの山に転がっていた岩だった可能性もあります。どおりで石頭なわけだ(笑)
そう考えると、どうせ私の体はどっかからの借り物、寄せ集め。そして、その一部は明日になれば、またどこかへ捨てられてしまっている。生物としての死を迎えたとしても、どこか知らないところに行ってしまうわけでもなく、地球上に残り続け、また何物かになっている…。なんてことを想像すると、気持ちが少しだけ軽くなるような気がします。
(つづく。)
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