(前回はこちら。>>>お金と仕事の価値


まがりなりにも作業が軌道に乗り始めた

2年目の夏。社会人として自立(自律)の

意識が高まるためにも「親元を離れる」こと、

その方法のひとつとして、グループホームを

開所することは絶対的に必要なことでした。


その地域にある障害者の社会資源は

その作業所ひとつしかなかったのですが、

新たに住まいを造っていこうという試みです。


仲間のみんなにも、その意義を考えて

もらえるように会を開きました。


「みんなは仕事をしてお金をもらうけど、

どんなことにお金を使っとる?」

「生活するのにどれだけお金が必要か、

知っとる?」

「自分の好きなものやお菓子ばっかり

買ってたら生活できんだよ」

「毎日食費がかかるし、水道代・電気代も」

「家がなかったら家賃も払わんといけん」

「だいたい、これぐらいかかるな~」

「でも、自分で生活できると、

こんな良いこともあるだよな~」


さっぱりちんぷんかんぷんの人がいれば、

真剣に聴いている人もいます。


「家を離れて生活すると、どんなことを

しないといけないか、泊まる練習を

してみませんか?」


「いいね~、俺やりたい!

やりたいんです、田中主任☆」

私のことをいつも役職で呼んでくれる、

ちょっとお調子者の住谷くん(仮名)が

私の目の前まで来て、そう言いました。


「よっしゃ~、住谷くん、やりたいか^^

どう?他の人は」


こういうときは、だいたい反対意見は

でません(苦笑)

受け身的な生活が多いので、

それも仕方ないのかもしれません。


というわけで、お盆が終わったあたりから

町の宿泊施設を借りて、4~5人ぐらいの

グループを作って1泊2日の宿泊体験が

始まりました。


仕事が終わってからスーパーに行って、

夕食の支度をして、夕食後に就寝です。

翌朝、朝ご飯を食べて作業所に行きます。

そこで、自分ができることをやり、できないところは

助けてもらい…ということを経験してもらうわけです。


親元を離れて生活する、ということはどういうことか。

身をもって体験してもらうわけです。

話を聴くだけではイメージできないことを

体験することで”分かる”ようになるわけです。




さて、みんなが宿泊体験を終えたところで、

グループホームで生活を始める4人を

決めることになったのですが…。


(続く。)



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