私の立場から考えて、今回のケースが

とても悔やまれる、ということで、

施設に入所されること、すべてが

悔やまれる、ということではないですよ。




去年の夏から担当になったAさん。

脳出血の後遺症で、寝たきり、経管栄養の

状態で、私の事業所に併設している診療所に

転院してこられました。


家族は奥さんと2人暮らし。

「せめて、口から食べられるように

なってほしい」と、奥さんは漏らしたそうです。


それから約2ヶ月、リハビリとケアの力で

口から食べられるようになって、

家に帰ることになりました。


ただ、奥さんは別の心配を抱えることに

なりました。

自分の体のことを考えると、

在宅介護ができるだろうか、

という心配です。

ここまで回復できるとは思いもしなかったので、

施設への入所申し込みもしておられました。


退院してから2ヶ月。

言葉も出なかったAさんでしたが、

それも次第に戻ってきました。

奥さんも在宅介護の心配を

口にされることも減ってきました。

介護にも少しずつ慣れてきたようです。


ところが突然、その日はやって来ました。

施設から入所の順番が回ってきたという電話でした。


奥さんは(まだ介護できる)という思いと

(将来的には施設に預けないといけないし)という

両方の思いを抱えていました。

まだ看れると思うし看てやりたい気持ちが強いけど、

この順番を逃せば、今度はいつ回ってくるか、

分からない、と施設の担当者が言うそうです。


最後の決め手はAさんの言葉でした。

「ええよ」と、ひと言だけおっしゃったそうです。


奥さんはその話を私にしたとき、

声が少し上ずっていました。




その話をじっと聞いていた私も、

(最後まで不安をとってあげることが

できなかった)と、自分の力不足を

悔しく思いました。


介護者の方が安心して介護を続けられること。

とくに力の弱い奥さんがご主人を介護するときに

抱える体力的な問題をどう支えてさしあげれば

安心感をもってもらえるか。


難しい課題です。



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