寒くもなく、かといって暑くもなく、
その日は本当に良い天気でした。
公用車の軽の窓を全開にして、
軽トラで走る息子さんの後を
ついていきました。
山の中の林道みたいなところを
少し入って、果樹園に到着しました。
ここは全国でも有数の梨の生産地。
今では、農家も高齢化になって、
木を切ってしまう家も増えましたが、
この息子さんたちのように、
代々、耕してきた土地を守っている
人たちも大勢います。
「ここだ。」息子さんの案内で、
果樹園に入らせてもらう私。
軽く学校の校庭ぐらいの広さはあります。
学校の校庭と言っても、
いろいろな広さがありますね。
全校生徒、300人ぐらいの学校の校庭です。
…中途半端な例え、すみません(^ε^)
「あそこ、あそこにおる。」
息子さんの指さす方向におじいさんはいました。
梨の木にしがみつくように立っています。
落ち葉と雑草のために、歩くたびにガサガサ。
その音を聞いてか、おじいさんはこちらに目をやりました。
息子の後ろを歩く見知らぬ男に
おじいさんはいぶかしそうに。
「こんにちは。○○の田中です」
デイサービスの名前を言うと、すぐに
分かりました。
「やあ、遠いところ、よう来られましたな。」
そして、次のひと言。
「仕事が忙しくてな、よう行きませんわ。」
おじいさんは、さっそく予防線を張りました。
(動くな!俺に一歩でも近づいてみろ、
どうなるか、分かってるんだろうな…)みたいな、
昨日ドラマで見た誘拐犯のように…(苦笑)
「そうですか。忙しそうですね。」
「そうですに。間引きが終わっとらんのは、
うちだけですに。」
そして、「何しとるだ、おまえも早うやれ。」と
息子さんに言いました。