私が無類の「王将」好きというのは、
皆様もご存じのとおりである。
今日も、「王将」好きの私は
ためらうことなく、のれんをくぐった。
カウンター席へ通された私は、
店員が厨房へ戻ろうと
する間も与えず、
「餃子定食。ご飯少なめで。」
と、いつものオーダーをした。
店員は、そそくさと伝票を書き、
厨房に戻るやいなや、
「ぎょお~てえ~、一人前」と
オーダーを通す。
「ぎょお~てえ~」=「餃定」=「餃子定食」。
私がいつも頼むメニューは
この餃定。
店員みたく、
「餃定」と頼んでもよいのだが、
ツウっぽくなってしまうので、
そこは一線を引いている。
(さあ、戦闘態勢に入るぞ)と、
ジャンパーを脱ごうとしたその時、
カウンターの前、上方にある貼り紙が
目に飛び込んできた。
(「2011年スローガン 目に見える進化」かあ。)
日々進化していきたいと思う私だが、
なかなか「目に見える進化」を
具体化することはできない。
「すごい、さすが王将。」と、ため息をつきながらも、
「ふふふ、そう簡単に進化できるかな?」と
お手並み拝見、といわんばかりの態度で
私は席に着いた。
餃定がやってくるまで、約10分はかかる。
その時間を利用して、餃子定食の魅力を語ると、
餃子定食は餃子2人前(12ヶ)とキャベツ中心の
生野菜。トマトの赤とキュウリの緑が彩りを添える。
そしてご飯とワカメとネギのすまし汁。
”ご飯少なめ”は私のこだわりだ。
ふくふく、カリカリ、熱々の餃子をひとつずつ、
箸で分ける。餃子の皮はそこそこ厚く
もっちりしている。
餃子のタレとラー油はお好みだが、
私はタレ:ラー油が4:1。ラー油を多めに
入れている。そして、餃子を
タレにつけて、ひとくちでほおばる。
もちろん、始めのほうは熱すぎて
「はごっ、はごごご…」となるので、
やや冷め加減のご飯を口の中へ投入。
それで、餃子の熱を中和する。
餃子-ご飯、餃子-ご飯、餃子-ご飯
と3回ほどくり返せば、その頃には
餃子もほどよい熱さとなる。
そこからは餃子の独壇場である。
餃子-餃子-餃子3連続餃子。
そのあとに、ご飯をがっつりほおばる。
ここでは3:1のリズムを刻む。
ご飯を少なめにするのは、
餃子とのバランスを考えてのことだ。
大盛りは嬉しいことだが、私の口の大きさと
3:1のリズムを崩さないためには
少なめの方が良い。
また、最後の方になってくるとラー油が足らなく
なるので少し足して、さらに餃子。
ラー油を入れすぎると辛くなるので
ご飯で辛さを鎮める。
あらかじめ最初にラー油をたくさん入れてしまうと、
餃子にラー油がべっとりついてしまうので
継ぎ足しがベターである。
さあ、そうこうするうちに
餃子定食がやってきた。
「ご飯これくらいで良いですか?」という
店員の言葉に、口元を緩めて軽くうなずく。
こんがり小麦色に焼けた餃子を見てもらいたくて、
手前に置いて写メを撮る。
さっきまで鉄板の上ではじけていた
ふくふくの”べっぴん餃子”たちである。
「私たち、食べ頃よ~ん」と、餃子から
立ち上る湯気が私を手招きしている。
(待て待て、慌てるな)と
私は、はやる気持ちを落ち着かせる。
(さて、タレを入れる取り皿を…)と、
その時、私は異変に気がついた!
ここの
この中には、
この取り皿が格納されている。
むき出しを嫌う客のために、
「取り皿カバー」が施されていたのだ!
(これか。これが「王将2011年の進化」か。)
むき出しでも、さほど気にしない私は
しかしながら、この王将の「目に見える進化」に
心の中で小さな拍手を送った。
ふくふく、カリカリの”べっぴん餃子”を、もう少しアップで。
いつもどおりに箸をすすめながら、
私は先ほどの問いの答えを探していた。
(おれは2011年、どんな進化を遂げようか…)
「焼きそば。大盛りで。」
私の隣に座った見知らぬ男は、
確かに、そうオーダーした。
(王将で焼きそばは、あまり頼まないな。
しかも大盛りで…。)
その時、私は、自分の視野の狭さを
感じ取った。
(そうか、餃子ばかりに目を奪われて
”王将では餃子を頼むものだ”と
決めつけていなかったか)
みるみる私の視界が開けた。
「2011年、餃子定食以外のものを
食べること」
これが、私の「目に見える進化」だ。
それは違うと思う(笑)