昔の話です。
私が新卒で特養の介護職だったときのこと。
私より3~4ヶ月遅れて入職した男性。
「柏原さん(仮名)」と言います。
それは、かれこれ20年も前のことです。
当時は男性の介護職、まだまだ少ない
ころでした。
私を含めて男性は3人。柏原さんは4人目の
男性職員でした。
柏原さんは東京の大学を卒業した後、
税理士事務所で働いていましたが、
親の説得でUターンしてきました。
柏原さんが、全く畑違いの
介護の職場に就いた理由は、
その昔、お姉さんが勤めていたからです。
当時から田舎では職業の選択がほとんどなく、
おそらく、事務員を雇うほどの税理士事務所も
この地域ではなかったのでしょう。
すでにお姉さんは結婚退職していましたが、
その紹介でこの職場を選んだようです。
そのころの柏原さんは、すでに30歳。
失礼ながら、十分中年体型でした。
顔は色白く、服装も地味。
話をしていても、正直なところ、
あまり楽しくありませんでした。
それはなぜか?
とてもネガティブだったからです。
柏原さんはこの地域では有名な
進学高校、そして誰もが知っている
一流大学の出身でした。
そのことを30歳になった今でも、
こだわっているみたいでした。
「田中くん。田中くんはどの科目が得意だった?」
なんて、中学生みたいな質問するんです。
(得意なものがないから、3流大学に行ってたんですけど(笑))と
心で思いながら、つまらない話を聞いていました。
Uターンして帰ってきたことを、明らかに
本意とは思っていない柏原さん。
その仕事ぶりも、いつも怠慢でした。
中学生のような反抗期、まではいかなくても、
言われたことしか、しない態度。
指導を受けても、改善なし。
「お姉さんとは全然性格が違うねえ」。
お姉さんのことを知っている
古株の職員さんは言っていました。
私は、はじめ柏原さんのことが
あまり好きではありませんでした。
いや、最後まで好きではなかったかもしれません。
でも、なんとなく、したくない仕事をする辛さって、
けっこうきついかも?…。
そう共感する部分もあったのです。
でも、柏原さんと話をしても、
必ず頭の良さをひけらかすので、
やっぱりイライラしてしまうのですが…(苦笑)
数年一緒に仕事をしていましたが、
私が転職して、それから顔を合わすことは
一切ありませんでした。