(これは、H22.3.16と同じ記事です。)


1週間ぶりに自宅へ行った。

「行っといた方がいいかもな」と思ったからだ。

玄関に67歳になる息子さんが出てきた。困った表情だった。

「おばあさんが寝たきりで、動かせん。どうしたらいいだろうか。」

ということだった。






92歳になる杉山さん(仮名)。息子さんと2人暮らし。

入院しているのが嫌で、治療途中で退院された。

私はそのことを病院訪問をしたときに知った。

もちろん、息子さんからの連絡もなかった。



病院訪問から帰って家に電話すると、

息子さんが電話に出た。

「本人が“帰りたい”いうもんを、

引き留められんですわ。」と息子さんは言った。

最期まで自宅で看ます、と決意を口にした。







部屋に行ってみると、厚い布団と毛布にくるまって、

横向きに寝ている杉山さんの姿が。

ベッドの横には、入れ歯が湯飲みコップの中に入っている。

頭元にチョコレートと干からびたミカンが3房、皿に置いてある。


「ご飯は食べておられますか?」
「ほとんど食わんだが。」
「水分は?」
「飲ませようと思っても飲まん。

栄養剤も、はじめは飲むけど、

すぐに飽きて“もういらん”って、言うだが。」


風呂は入らず、タオルで拭くだけ。

おしっこも出ないから、おむつもほとんど交換しない。


「昨日からうわごとのようなことを言って。」

脱水だからだと思う。

声をかけると、ちゃんとした返事はないが、

答えることはできる。



近くのかかりつけのお医者さんに連絡して、そこへ行った。

「入院するか?」と話しかけるドクターに杉山さんは首を横に振った。

「まず、点滴をしよう。」。



別室で、点滴の用意がされた。

看護師さんが血管を探すが、なかなか浮いてこない。

「入院した病院でもそうだった。」と息子さんは言った。

「なかなか血管が分からずに、なんべんも針を刺しただけ。」

それを痛がって、入院が嫌だったみたいだ。

「困ったことになった。」と息子さんはつぶやいた。



結局その日は、そこに入院になった。

続く 。)



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