(第4回はこちら。>>>戦場カメラマン?言うてる場合じゃない!!)
私は病院へ向かった。そこにはすっきりした顔の村田さん(仮名)が座っていた。
「おお、どうした?」
どうしたじゃないよ。
でも、顔は覚えてくれたな。
「たいしたことはない。たいしたことはないのに連れて来られただが。」
相変わらず、意地を張っているのか、呆けているのか。
「家に帰っても、きちんと飲んだり食べたりしないと、また病院に逆戻りですよ」。そういって脅すが、本人は何食わぬ顔。
「わかっとる、わかっとる」と言って、私の脅しをかわした。
次の日、また村田さんの家に行ってみた。
今日は元気そうな顔つきだった。
「昨日の弁当はきれいに食べておられましたよ。」とヘルパーさんは報告してくれた。
「弁当、おいしかったぞ。持って来てもらうと有り難い。」と、村田さんは言った。
聞くと、冷凍したご飯と干物を食べた形跡もあり、朝食はそれで済ませたようだ。やかんが火にかかっていて、お茶も沸かしたらしい。
「弁当は夕方に毎日来ますからね。」
「そうか。でも、時々買い物に行くからおらんこともあるぞ。お金を下ろしたいけ、銀行にも行かんといけん。」
“お金は弟さんに預けたら?”と言おうと思ったが、少し様子を見ておこうか。銀行にも行けるかどうか、分からんし。
翌々日、ヘルパーさんの訪問時間。時間を合わせて、私も家に行ってみた。
ヘルパーさんはもう自宅に着いていた。しかし、玄関でウロウロしている。
「村田さん、いないんです、カギもかかっていて。」
後日聞いてみると、やはり銀行に行っていたらしい。バスを使って、帰りはタクシーで。
完全復活か!?
だんだん蘇る、村田さん。
いつかサービスが必要なくなって、元の生活ができるといいね。
(おわり。)