今年で米寿になる、気難しいおじいさん。名前は村田さん(仮名)という。若い頃に妻を亡くし、そのまま1人暮らしを半世紀近く続けている。

子供はないが、6人兄弟で近所に1人だけ弟が残っている。



10月になったばかりの頃、玄関前の階段で転倒して、倒れているのを民生委員さんの富田さん(仮名)が発見、そのまま入院になった。



1人暮らしで部屋も散らかり、これから寒くなる冬場を迎えて、近所の人も「ストーブで火事でも起こさなければいいが。」と言っている。



「退院したあと施設に入るか、家に戻るか」ということで話がこじれて、今の今まで退院ができなかった。



「心臓も悪いし、兄さんのことを考えると血圧が上がるわ。俺はよう面倒は見ん。」と断言する弟。「弟さんがそう言ったら、誰も手が出せんな」とため息をつく民生委員。その場にいた区長さんも「近所の人もそういう人が多いだろうね…」と、半ば仕方なし、という感じだ。



「じゃあ、そのことを誰が言いましょうか?」病院の看護師長は詰め寄った。

その問いかけに、答える者はなし…。



「村田さんは、時々話がちぐはぐするけど、意外と呆けてないような感じですよ。家に帰ったらシャンとするかもしれ…」と言うか言わないかのときに、「その半呆けが面倒やがな」と弟は看護師長の言葉を遮った。



「いつまでも病院におることはできんし、どうします?」主治医の先生が言った。



参加者全員が、皆、ため息をつく。



「まあ、いっぺん帰ってみましょう。帰ってみないと分からないからね。」

「弟さんだけに負担をかけることはしませんから。こうして、役場の人もいるし、ね。」

無口だった包括支援センターの職員は、力なく微笑んだ。



「まあ、それしかなかったら、そうしますわ。でも、またすぐに入院を頼むかもしれんでえ。」と、弟はおどけた。



「じゃあ、田中さん。あとのプランはよろしく頼みますわ」。



私も、力なく微笑んだ(苦笑)


(つづく。)


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