(前回はこちら。>>>どっちがいいんだ? )
児玉さん(仮名)は、97歳の不死身な人です。緑内障が悪化して目はほとんど見えず、そのために2度骨折して入院したんですが、驚異の回復力で在宅生活を続けています。
でも、さすがに足の力は弱く、退院するたびに「歩かせないように」とお医者さんから言われますが、ご本人はどこ吹く風。家族の知らない隙に玄関や仏壇に行ったりしています。
目が見えないから、もちろん手探りで。2回の骨折もそれなんですね。これも認知症があるから為せる技だと思うんですが…。
「いつも計画してもらって、本当にみんなで喜んでいるんです。」娘さんはそう言いました。
それが本心なら良いんですけどね。でも、本心じゃないからここに居るわけですから。
「それでショートステイは、あれぐらいの日数が良いでしょうか?」
う~ん、2分ぐらい待ってみましたが、“このままでは娘さん、リピートするだけだな”そう思い、こちらから水を向けてみました。
「もしあれだったら…。そのお~…。」“歯に物が挟まる言い方”、私まで移っちゃいました^^
「長い方がいいですか?もう少し…。ショートステイ。」
そのとき、娘さんの口元が少し緩んだように見えました。
「そうですね、難しかったら別に良いんですけど…。」
これで分かりました、“もう少し長いショートステイのほうがいい”ということが。
「それはあれですか?皆さんがそう思っておられる、ということですか?美香さん(仮名)も?」
美香さんとは、児玉さんと一緒に住んでいる孫のお嫁さんのことです。児玉さんの家は、孫夫婦とその子供達、5人家族でした。児玉さんの息子夫婦は亡くなっています。児玉さんの介護は、おもに孫嫁の美香さんがしていました。
だから、余計に分からなかったんです、よそに嫁いでいる3人の娘さんがここにやって来たことが。
“ショートステイが長いほうが良い”というのは、美香さんが大変そうにしているから、そう思われたのだろうか?
少しの沈黙のあと、もう1人の娘さんが口を開きました。
「美香さん達には言ってないんですけど、おばあさんも喜んでいますし、美香さんにとっても、そのほうが良いと思って…。」
「おばあさんから聞いた話なんですが、美香さんがよく怒るらしいんです。私たちがいてもあの口調ですし。」
確かに。確かに美香さんはちょっと荒っぽい言葉を使うことがある。怒鳴る、というようなことではなく、「早く逝ってくれればいいのにねえ~、しぶといわ。」みたいなことだ。
それを冗談っぽく言うのだが、たまに冗談に聞こえないくらいのこともある。それは3人の娘さん達を前にしても、だ。
娘さん達にとっては、それが聞くに堪えないようでした。
「なんとか、美香さんの言葉、あれだけでも直ってくれたら良いんですけどね…。」
なんとなく分かってきたぞ。娘さんは、私から美香さんに注意してくれたら、ということだな。
それが付け届けの理由…だな(笑)
(続く 。)