神谷さん(仮名;78歳)は1人暮らしの女性。


両股関節が変形し、人工関節を入れる手術をしておられます。その手術が成功してからは歩くときの痛みがなくなり、家事も自分でやっておられます。

当時は介護保険を使ってヘルパーさんを利用しておられましたが、現在は手助けが必要なくなった「介護保険卒業組」の一人です。


痛みのために閉じこもりがちだった神谷さんも、痛みが無くなったので、出かける場所を作りましょうよ、と趣味のサークルを紹介しました。

そこで、数人のお友達ができて、生活する楽しみができた、というのも、介護保険が必要なくなった理由のひとつだと思います。


介護保険から卒業すると、私たちケアマネジャーも関わりがなくなるので、しばらく会うことがありませんでした。


そんな神谷さんから久しぶりに電話が来て、半年ぶりにお家へお邪魔しました。



「どうですか?コーラスでできたお友達とは、仲良くやっていますか?」


神谷さんの趣味のサークルとは音楽サークル。キーボードを演奏する会に入っておられます。



「それがねえ、最近行きたくないのよ…」と浮かない表情の神谷さん。

「キーボードの先生が、だんだんと色んなことを要求してきて、最近ついていけないなあ、辞めようかなあ、って思って…。」


色んなこと、というのは、仲間になった頃は右手だけの演奏でよかったのに、最近は左手も使え、と要求されている、とかそういうこと。


「この歳になって、こんなにしないといけないか、と思うと、もう辞めようかな、って思ってね。他の生徒さんから「右手だけでやればいいじゃない」って、励ましてもらっているんだけどね…。私も一番年配だし、そろそろ、ねえ。」



そろそろねえ、って、辞めたら行くとこ無くなりますよ。

「デイサービスでも行きますか?」と、笑って尋ねると、

「そうなのよ。それはまだ早いと思うし…。」


そうですよ!神谷さんは、まだデイサービスには…。


ああ、こんなふうに歳を取って行くと、だんだんと行きづらくなって、閉じこもってしまうのかなあ、と思いました。そうして生活範囲をどんどん狭めていって、やがて虚弱になってしまうんだなあ。




ここで、ふとナイスコメント(!?)が思いつきました。



「でも神谷さん。神谷さんの次に年配の人はどうするんですか?神谷さんがいなくなると、きっとその人は「私も辞めようかな…」ってなりますよ、きっと。」


そのとき、神谷さんはパッと目を見開いて言いました。


「そうなの、そうそう。そのことを言ったら、「そしたら、私も辞めたいわ」って、その人が言ったのよ。」


ほうら、やっぱりね!


「だから、辞めちゃいけないですよ、その人のためにも。辞めるのは簡単だけど、再開するのは大変だから。」

「そうねえ。」神谷さんは、まだ悩んでいました。



どうしますかね、神谷さん。

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