「田中さん、もうやれんわ…。」

言葉の主は山崎さん(仮名 83歳)。奥さんと2人暮らしです。


山崎さんは10年前に脳梗塞になり、右半身が不自由です。でも、人の世話にはなりたくない、という気持ちが強くて、体が不自由でも(自分でできることは自分でする)とリハビリに頑張っています。

その努力のおかげか、入院していたときは要介護2だったのが、現在は要支援1となり、日常的なことはすべて自分でしています。

3~4㍍はあろうかという庭木の剪定も、ご自身ではしごをかけてやってるんですよ。


昔気質の性格で自分に厳しくされているから、ここまで頑張ってこられたんだと思います。ただ、人にも厳しいですけどね^^


そんな山崎さんが“まさか、そんな弱音を言われるとは…”と意外だったのですが、その理由を聞くと、なるほど頷けました。





“奥さんのこと”です。





奥さんは87歳の姉さん女房。若い頃は厳しい山崎さんに仕えて、3人の息子さんを育てながら、山崎さんと農業をしてこられました。

しかし最近、物忘れが増えてきて、毎朝「今日は何日かなあ?」と繰り返します。そしてトイレをしくじったりすると、山崎さんは厳しく奥さんを咎めました。


「叱ったらいけん、って言うけどなあ、なかなかできんことだわ…」。


大正生まれで厳格な山崎さんが衰えていく奥さんを見て、我慢しようにも出来ないいらだちが感じて見えました。



山崎さんが弱音を吐いたのはこういう理由でした。



夜も更けた頃、0:00を過ぎたばかりの頃だった、といいます。

夜な夜な奥さんが起き出して、ゴソゴソするんだそうです、それもほぼ毎日。

山崎さんが「まだ夜だで。寝てないといけん。」と言っても、奥さんはすぐに忘れてしまいます。起こってはいけないと思いつつ声を荒げると、奥さんは辛くなってさらに外へ出ようとします。


ある時、外から「ゴツン」という物音に気づいた山崎さんが外へ出ると、そこには奥さんの倒れている姿が…。

幸い、骨折などはありませんでしたが、「四六時中、側についてないといけん。」と、山崎さんはほとほと困り果ててしまいました。


私は、山崎さんの大変さを受け止めながらも、一方では認知症の専門医への受診、ショートステイでの息抜きを勧めました。






それから数日後、山崎さんの家へ訪問したときのことです。

山崎さんの顔が笑顔であふれていました。



「田中さん、すごいもんだなあ。」部屋に入るなり、山崎さんは嬉しそうな表情をして話し始めました。





「夜、ぐっすり眠るようになったで。」と言いました。





「えっ!?どんな魔法をかけたんですか?」笑って私が尋ねると、「ご飯、ご飯。」と山崎さんは言いました。





ご飯に睡眠剤を…?(笑)





「夜のご飯を遅くしただ。6:30頃食べていたのを7:30にした」と山崎さん。

どうやら、奥さんが夜中にゴソゴソ起き出すのは、お腹がすいていたから、ということのようです。

「ご飯を食べたら、すぐ寝るけな。ご飯の時間を遅くしたら、寝る時間も遅くなって、4:00ぐらいまでは寝るだ」。



お年寄りは夕食が終わるとすぐに寝てしまう人も多いです。

そうなると、夜中の1:00、2:00頃には目が覚めてしまうんですね。

もちろん、お腹もすいているでしょう。

そうして、ゴソゴソと起き出して、食べ物を探す。それが原因のようでした。




一本取られました。しかし、勉強になりました^^




私、な~にもしてません(苦笑)

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