(前回はこちら 。)
「う~ん、田中くん。ちょっと妻に聞ける?」と上司が言った。
上司の思いも寄らない返事とは。
それは、何か。
デイサービスを代わりたい、というのなら分かる。近所や知人から、「あそこのデイサービスはいいよ」とか、「誰それがこの間からデイサービスに行っている」なんて話が出るのは、よくあることだ。
でも、「ケアマネジャーを代える」という言葉はなかなか出ないんじゃないか、というのである。
もちろん、利用が始まる前に「ケアマネジャーがどんな仕事をする人なのか」、「ケアマネジャーの事業所は、この地域のどこにあって、希望によって替えることもできる」というようなことは話す。
しかし、今から利用を始めようとする家族が、そのことをどれだけ真剣に聞いているのか、それは疑問に思う。
人間は、関心のないことは聞き逃すようにできている。溢れるほどの情報をすべて頭の中に入れようとしたら、きっとパンクしてしまうはずである。
今、まさにデイサービスを利用しようとする人にとって必要な情報は、ケアマネジャーの情報ではなく、デイサービスの情報であるはずだ。
そこから長いつきあいの中で、ケアマネジャーという人の仕事を少しずつ理解していただく、そういうスタンスで私は関わっている。
しかし、もちろん、会うたびに「ケアマネジャー替えることができますが、どうしますか?」なんてことを聞くこともないし、その人や家族の思いに変化が起こったときに、そういう話をしている。
例えば、「将来は施設にお世話になりたい」という希望が出始めたら、施設に併設しているケアマネジャーを紹介したり、とか。
前置きが長くなったが、あまり家族のほうから「ケアマネジャーを替えたい」と言い出すのは気になるなあ、というのが、上司のひっかかりであった。
「その人のこと、私も知ってるし、聞いてみようか?」と上司は言ったが、私はどうしても自分で確認したくなって電話をかけてみた。
「う~ん、いやそういうことはないんだけどね…」といって、妻は語り始めた。
「近所にそこのデイサービスに勤めている人がいて、デイサービスに来ないかって、誘われたのよ。」
「そうですか。ケアマネのことも、その人から話があったんですか?」
「ケアマネ?う~ん…。」
やっぱり、直接聞かなかったほうが良かったのかもしれない。家族にとっては、言いにくいことだったのだろう。
でも、おそらく間違いない。これは、勧誘であり、営業なのだ。
もちろん、そんな営業に負けないような信頼の置けるケアマネジャーだったら、家族はケアマネジャーを代える、という選択はしなかっただろう。
だから、私への満足がない、という前提の「ケアマネジャーの変更」なのだ。
都会ではどうか分からないが、田舎ではあまり聞いたことがないお年寄り争奪戦。でも、実際にこういうことがある、と実感した。そんな争奪戦に負けないように選ばれるケアマネジャーでなければいけないと思った。
ケアマネ職人、惨敗(泣)