ある日のこと…。
「あ~~~~、おじいちゃん、危ない、危ない!ほんとにも~~…」
「なな、なんじゃよ、ちょっとふらっとしただけじゃろ」
「あなた。最近おじいちゃん、歩くのも危なくなってきたわね」
「そうだな、人のご飯と自分のご飯も分からなくなってきたしな…」
「隣のツトムじいさんが亡くなってから、めっきり外に出なくなったわね…」
「デイサービスに出てもらったら良いんだけどな…」
「役場に行って、相談してみましょうか?」
次の日…。
「おじいちゃん、おじいちゃん。起きてよ」
「う~~ん、なんじゃ。どうしたんじゃ?」
「ちょっと一緒についてきて」
「いやじゃあ、ワシは頭が痛いんじゃあ!」
「いつもの仮病か?おじいちゃん、おじいちゃんじゃないとダメなんだよ」
「なにがじゃ?」
「田んぼの水を見て欲しいんだよ」
「う~ん、今じゃないとダメかの?」
「どうしても今じゃないと…」
そうして役場へ行きました。
「タナカ ダイゾウさんですね」
「そうじゃ」
「じゃあ、ここに署名して下さい」
「なんで、そんなこと書かんといけんのじゃ…?」
「介護保険の申請です」
「ダイ…?ダイソウゲン??大草原ってか?そりゃうちの周りは田んぼばかりじゃが…。それがどうした?」
「ハハハ、すみません。耳が遠いもので…」
「ま、まあ、いいでしょう。そういうことで」
「かかりつけのお医者さんはいますか?」
「体は元気なので、どこにも行っていないんですよ」
「認定の判定をするためにはお医者さんの意見書が必要なんですよ」
「ワシは昔っから病院ちゅうもんに行ったことがない」
(さっきは”頭、痛い”って言ってたくせに…)
「まあ、近くの診療所で良いですから行ってください」
「いつごろからデイサービスに行けるんですか?」
「はい、申請を受け付けましたから今日から行けますよ」
1週間ほどして調査員がやってきた。
「お名前はなんと言われますか?」
「名乗るほどのものではありません、なんつってな!」
「ここはどこですか?」
「家に決まっとろうが!」
「何歳ですか?」
「昭和43年生まれじゃ。人に頼らずに計算してみ!」
それから、さらに2週間後…。
「あら、役場からおじいちゃんに手紙だわ。何かしら…?あら!あなた…」
「うん?おっ、やっと来たかあ」
「おじいちゃ~~ん、手紙だよ~~。」
「なんじゃ?それがどうした??」
