今朝は朝から頼まれごとです。
「様子を見てて。」と頼まれました。
うちの事務所は通所リハビリの事務所と兼用になっているのですが、今朝は早くから利用者さんが。
「事務所からでいいから、時々様子を見たってえ。」
通所リハビリのスタッフが送迎から戻るまでの間、私は利用者さんの様子を見守ることになりました。
望月さん(仮名 女性 82歳)が早く来た理由は、介護する娘さんが朝早くに用事があるから。望月さん、人がいないと心配で席を立っちゃって、フラフラッとして、コテン、とすることがあるそうです。ほ~んのりと認知症のほうが…。
(時々じゃ、危ないでしょ)と思い、フロアに出て、望月さんのテーブルに行きました。でも、行く途中であることを思いつき、身を隠すように望月さんの背後へこっそりと…。
(もしかして大丈夫じゃないか)と思ったのです。望月さんは入浴に使うタオルをたたんでいました。山のようなタオルを目の前にして、望月さんは一生懸命むかっています、席を立つこともなく。そして、背後で息を潜めている私の気配を感じることなく…。
(クックックッ…)私は意地悪い人間です。後ろで望月さんの仕事ぶりを監視しているわけですから。
しかし、やがて望月さんは必死に動かしていた手を止めました。なにやら迷っている様子…。
なるほど、綿のタオルの中に体をこするナイロンタオルが混じっていました。今までは縦・横と、4つ折りでたたんでいたのが、ナイロンタオルではそうはいかない。横に短く、縦に長いので、綿タオルのようにたたむと、“ふわっ”って、元に戻ってしまうんです。
やがて望月さんは、他のナイロンタオルを探して重ね始めました。重ねて、手で何度も伸ばすようにして。「なんか違うなあ…」と思ったのでしょう、3枚重ねたところで手を止めて、2枚を山のほうに戻しました。
すると、今度は綺麗にたたんでいた綿タオルを手元に寄せて、しばらく眺め、元に戻すと再びナイロンタオルでチャレンジです。タオルの端と端を合わせるのですが、今度はタオルがねじれて“メビウスの輪”みたいになってしまいました。
ため息をつく望月さん。
(さあ、どうする?望月さん。ここは助け船を出すべきか…)後ろで息を潜めている私は、声をかけるのがよいか、もうしばらく待って、望月さんが自分で壁を乗り越えるのがよいか、判断がつきかねていました。
「ちょっと、ちょっと…。」
望月さんは、遥か先のほうでテキパキと仕事を始めた看護師さんを呼びました。
「これはどうしたらええ?」
「どうしたですか、望月さん?あっ、ありがとうございます、たたんでもらって。」看護師さんは近づいてきて、ナイロンタオルのたたみ方を伝授し始めました。
「これは、こうしてください」看護師さんは、綿タオルのように縦・横ではなく、縦に2回たたみました。
「それ、ちがう。」望月さんは言いました。
(おっ、強いな、この人^^)
教えてもらうつもりで呼んどいて、やり方を否定するとは…。
(よし、今だ!)と思った私は、2人のところに話しかけました。
「精が出ますねえ。」
「……………。」
望月さんは、私の顔を眺めたあと、“ふ~~っ”とため息をつきました。
(あんた、誰なん?)みたいな顔をして…。
笑って看護師さんが立ち去った後、再び、タオルを手にする望月さん。
「目が見えんようになってきた」
「指先が震うわ」
と言い訳をしながら格闘していた望月さんは、やがて私を見て「お茶持ってきて」。
「お茶…。飲みますか?^^」といって、私の分と望月さんの分、コップを2つ運びました。
「美味ないわあ。」おいおい^^;
「甘いのがええわ。」知るか!
「あんた、ここで何を勉強される?」と望月さんは聞いてきました。
「私ですか?私は連れて来られましたに。初めて来ました。」
望月さんは、“ふんっ”とした顔をしつつも、次にはニヤッとして、「私もなあ、連れて来られた。」と、身の上を話し始めました。
「今朝は早かったぁ…」って言ったので(この人、結構分かってるな)と思いました。
それから、茶を飲みながら5分くらい、家のこと、通所リハビリのことなど話してくれました。
「あそこに、“ゆ”って書いてあるが。あそこの先に…」望月さんは、浴室の前に掛けてある“のれん”を指さしました。
「お風呂がありますね、お風呂好きですか?」
「何?あんた。風呂の場所、知っとるんかいな?」
(はっ!!初めて来た人の設定だった…)望月さんに、ばれてしまいました^^;
うそはいけません(笑)


