(前回はこちら 。)
「じゃあ、できないことをもう一度言ってみましょうか…」。
私が意を決して、もう一度チャレンジしてみることを提案しました。
「そう、そうしてくれる?このイスは危ないけ。
だけ、食堂のイスにすれば良いのになあ。」
お嫁さんはさっきから同じことしか言いません。
だから、本人に言ってよ^^;
私たちは再び、ジャングルの奥地へ足をすすめることにした…
「小杉さん(仮名)、回るのを止めるのはやっぱり無理ですわ。
…どうしても、このイスのほうがええ?」
小杉さんの唇は少し震え、怒りが収まらない様子。
「このイスは頭まで背もたれがないけ。首を支えてもらわんと座れんだけ。」
(何度も言ってるだろう…)という表情。
しかし、他人様だからそんなに厳しくも言えない、
そんな感じが見てとれました。
でもまあ、しかし、確かに食堂のイスだと、
くつろいでTVを見たりすることはできんわな。
でも、座面が低く、回転するイス。
立ち上がるときには誰かの手を借りないといけない
煩わしさから本人も解放されたいだろうに…。
「これはな、いろいろ思い出があるだけ…」と、
小杉さんは自分の心を落ち着けるように
ゆっくりと話し始めました。
聞くと、これは還暦のお祝いに、
息子さんから送られたプレゼントだったらしい。
だからよけい愛着があって手放せないのだ、と。
…そうか、そうだったのか。
今95歳の小杉さんが還暦の頃から使っているということは、
実に35年にわたってこのイスに座り続けていたんだ。
なかなか、他のイス、というわけにはならないだろうな。
う~ん、でも、どうする。
「そうですか?そしたらこれが…」
業者さんがおもむろにカタログを開き始めました。
「これなんかどうでしょう…。」
(実物とは違います。写真はイメージです。)
(昇降座いす。福祉用具貸与。)
「これなら立ち上がりもしやすいですし、
頭も支えてくれますし。」
「お、これならええわ♪」
なんだよ、あっさりしてるんだね^^;
数日して、小杉さんに会いました。
「どうですか?使い心地は?」
「ええで。立ちやすいしな、ちょっと固いけど。」と
ご満悦の顔でした。
本日のミッション、完了。


