(前回はこちら。→施設長のひと言 )
加藤浩一(仮名)が退職した、と聞いたのは、
私が退職してから4年後のことである。
そのときには、私は2回めの転職をしていた。
ある日、銀行のATMで、一緒に勤めていた
栄養士の若槻さん(仮名)に出会って、そのことを聞いた。
あの頃と変わらず、若槻さんはおしゃべりだった。
「そうそう、加藤くんのこと、知っとる?
病院の先生に誘われて、10月から診療所の事務をしとるだよ。」
え~、現場主義だった加藤が、事務なんてできるの?
なにやら病院に知り合いがいて、そのつてでドクターと
仲良くなったらしい。そのドクターが病院を辞めて
診療所を立ち上げるとのことで、一緒に働こうよ、と誘われたそうだ。
私はビックリして、何年後かぶりに加藤に電話した。
「あ~、久しぶりっす、大造さん。」
昔と変わらない、明るい加藤の声だった。
「下川さんと一緒の施設、辞めたみたいですね^^」
うっせ~よ。
なんで知ってんだよ。
「(栄養士の)若槻さんから聞きました^^」
若槻さん、早っ…^^;
「診療所とデイケアが併設してるんですよ。今度、来てくださいよ、絶対^^」
「へ~、行かしてもらうわ。でも、事務長かえ?出世したなあ。」
「事務長って言っても、現場にも出るんですよ、へへへへ」
何年も話をしてなかったが、生き生きしている様子はすぐに分かった。
やっぱり障害者よりも、高齢者に関わりたかったのかな。
それから1週間後、無性に加藤に会いたくなって、
私は加藤の勤めるデイケアへ向かった。
(つづく 。)