(前回はこちら 。)


私はこんな光景を見たことがあります。

そのデイサービスは、自立支援介護を徹底したデイサービスでした。

他のデイサービスでは重度化してしまうお年寄りを元気にさせてしまう、

評判のデイサービスです。

どんなケアをするか、というと、例えば徹底した水分管理。

お年寄りの多くは「たびたびトイレに行かないといけない」などと言って、

水分を控える傾向にあります。

そして、1日に必要な水分をとらないお年寄りたちがいる。

その水分補給をうまく工夫して必要量を飲んでもらう、ということをしています。



ある日、デイサービスから家に帰るときのことです。


半身麻痺のおばあさん。このおばあさんもなかなかの水分嫌いでした。

その日もあと少しで目標量の水分を飲めるところでタイムアップになってしまい、

帰ることになりました。

さて、車に乗り込んだのは良いんですが、それから1人の介護職員が

すでに車に乗っているおばあさんにコップを手渡しました。

そしてひと言。「これ飲まんと帰れんよ」。


その職員はその場をさっと離れました。


中には、コップ8分目のお茶。
飲まないと帰さない、ということのようです。



おばあさんは悲しそうな顔をしました。

コップをほおり投げることもできないし、

かといって、なかなか飲むこともできないし。

その様子を見るに見かねた私は、近寄って「返しておきましょうか?」と、

声をかけました。おばあさんは小さな声で「ありがとう」とだけ答えました。



水分量は必要な分だけとらないと、病気になったり、

体の不調を起こしたりします。脱水で動作が鈍ったり、

認知症症状がひどくなったりしている人を見たこともあります。

人間に必要な1日の水分量があるのも知っています。

生理学的に必要な水分量はこれだけで、それに足らない場合は飲んでいただかないと

生命の危険まで及ぼすこともあります。

ですから、この場面では私は間違ったことをしています。



でも、その日コップ一杯の水分が足らなかったからといって、

このおばあさんが病気になるのか…。



…いや、もしかして病気になるかもしれません。なるかもしれないんです。

でも、ならないかもしれない。それは分からないです。



ただ、突然コップを持たされて、嫌な気持ちになったおばあさんのことを考えると、

「そこまでしなくても…」という気持ちになったんです。

ここが、とても難しいところです。

その日に足らなかった水分をあの場面で摂ってもらうこと。

これが「行きすぎた自立支援」なのか、「当然の自立支援」なのか。


その場面に遭遇した私は、そのとき「行きすぎた自立支援」だと思ってしまったのです。


人はいずれ死ぬんだから。治せない病気はあるんだから。

元に戻せない障害はあるんだから。歳を取って足が動かせなくなることはあるんだから。

それを、「自立支援」の美名の元に、その枠にはめられようとしている当事者の

生きにくさにあのときは共感してしまったのです。



私の行った行為に疑問を感じる方もいらっしゃるでしょう。

賛同してくださる方もいらっしゃるかと思います。



ただ、その方法論なり理論に頼り切って、生きやすさとか、生活とか、人生とか

との天秤をかけなければ、自立支援をいっても、本人にとっては辛いことなのだろうな、と思います。


「医学モデル、治療モデルは冷たい」というのは、そういうことなのかな、と思います。



ただ、誤解のないようにつけ加えておけば、介護分野における自立支援の方法論は

医療に比べて圧倒的に遅れている、という印象を私は持っています。

ですから、もっと「自立支援介護論」みたいなものはもっと追求されるべきだと思っています。



さて、「自立支援は第1の価値」とせずに、

人間の生きやすさを追求するのが井戸端元気の伊藤さんだと思います。


伊藤さんのところは徹底していますよ。




こんな話を聞きました。




続く 。)




次回が最終回です^^

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