先日 、「井戸端げんき」の伊藤英樹さん の講演会を開きました。今日は伊藤さんの運営している事業所「井戸端げんき」がどんなところか紹介したいと思います。


伊藤さんは神奈川県出身。高度経済成長を支えた団塊世代の子ども。いわゆる団塊ジュニア。住まいはマンション、典型的なカギっ子だったそうです。

偏差値教育のまっただ中の時代、人付き合いに疲れて人を信用できなかったり、自分はなんのために生まれてきたのか分からず、ぼんやり死ぬことだけを考えていたこともあったそうです。


福祉に関わるようになったのは日本社会事業大学に進学して、ボランティアを始めた頃から。卒業後は知的障害者施設で働き、そこにいる人たちが今だけに向き合って一生懸命生きていることに感動し、自分の生き方にも自信が芽生えるようになったといいます。

そんな時に起きた父親の病気。脳卒中だったそうです。伊藤さんは止むに止まれず、施設を退職。住まいを千葉県に移し、1年間の入院中に認知症が出始めたお父さんと同居する生活が始まります。


しかし、新たに勤めることになった老人ホームでは、年寄りを物のように扱っている様子が、昔の施設と何も変わらない、という現実に愕然とします。


そんな中で出会ったのが三好春樹先生の「関係障害論」。この著書をきっかけに伊藤さんは独立を決意します。それはお父さんの「居場所」であり、どの施設にも勤められない自分の「居場所」でもありました。それが「井戸端げんき」の始まりでした。


さて、伊藤さんの事業所がある千葉県木更津市は、かつては製鋼などで栄えた街。しかしバブルの崩壊に伴って不況の波に飲まれ、当時37万人いた人口もいまや12万人にまで減っています。木更津駅前は賑わっていた頃の大型デパートが入っていたビルも空きビルになって、商店街もシャッター通りといわれるように、すっかり寂れてしまった街になっているそうです。「木更津キャッツアイ」という映画を見るとその寂れた様子が分かる、と、伊藤さんと親交のあるいくのさん家 は言いました。


そんな木更津の街に、お父さんと2人の「居場所」を造った伊藤さんでしたが、しばらくするとぽつぽつと利用者が増えていきます。40代で脳卒中になって病院先でのリハビリも終了したが、会社復帰ができない失語症のある男性。認知症症状が激しくて、受け入れ先の施設が根を上げてしまった80代の女性。大学生の頃に統合失調症になりそれ以来15年もの間、引きこもっていた男性。


社会福祉制度から漏れてしまった人、制度から追われて居場所のない人、そんな人たちが集まる中で、彼らはお互いの関係の中で自分らしさを見つけていきました。


認知症の80代の女性はどんなに職員が手を尽くしても心を開かなかったのに、引きこもりの男性を出会うことによって、気持ちを安定させ、生き生きとしていきます。失語症を患っていた40代の男性は関わりの中で言葉を発する事ができるようになりました。

「井戸端げんき」は、介護保険上では通所介護(小規模型)。しかし、制度に漏れるような人、他の事業所では断られてしまったような人、どんな人でも「井戸端げんき」を必要としている人ならば、どんな人でも受け入れます。


伊藤さんは言いました。「木更津はバブルが弾けてからは他から忘れられた街。自分も縁あってここに流れ着いたんだ。どこにも行き場をなくした人たちが寄ってきて過ごしてくれればいい。自分も井戸端で元気をもらっているんです」と。


ざっと伊藤さんの経歴と「井戸端げんき」はこんな感じです。




さて、昨日の記事で「井戸端げんきは介護サービスの現状に問題提起をしている」と書きましたが、それはどういうことか。



長くなるので、また明日^^v


関係障害論 (シリーズ 生活リハビリ講座)/三好 春樹
¥2,625
Amazon.co.jp

奇跡の宅老所「井戸端げんき」物語 (介護ライブラリー)/伊藤 英樹
¥1,575
Amazon.co.jp


「続きが楽しみ!」という方、クリックを。

   ↓↓↓
正しいケアマネの歩き方  ~ケアマネタマゴが贈るケアマネ道!~-ブログランキング