その異変に気がついたのは、日曜日の朝だった。
日曜日の朝は、いつもより1時間ばかり遅く起きるのが習慣になっている。
その時間になると、自然と覚醒するのだ。
そして、この日も同じ時間に覚醒した。
「あ、今日は日曜日だったな」と思い出しながら、
起きようとして上体を起こそうとした、そのとき。
「うぎゃやあああああ…」。
…腰に電流が走った。悲鳴を上げたかったが、
上げられないほどの痛みだった。
しばらくその電流が腰の中を行ったり来たりしている。
その間、私はそのままの姿勢で電流が収まるのを待つしかなかった。
堪えて、堪えて、堪えて。その姿勢のままで堪え続けた。
電流が収まるまで1分近くかかったと思う。
……………。
体を横たえたままの私は、痛みが収まった安堵感の中に漂った。
「またやったな。“きより腰”だな、たぶん…」
この痛みには覚えがある。
“きより腰”とは、この地方の方言であり、一般的には“ぎっくり腰”という。
腰に“きよっ”とした痛みが走るから、“きより腰”というのだと思う。
まだ私が若い頃、25歳頃だっただろうか。
特養の入浴介助で初めて“きより腰”になった。
それ以来、あまり腰の調子が思わしくない。
安堵の気持ちは、すぐさま恐怖感にとって変わった。
「俺はこのまま、どうするんだろう…」
身動きひとつとれないのだ。
いや、正確には上腕から指先までは動かすことが出来る。
動かせないのは体幹と足。
わずかでも動こうものならさっきの電流が私の体を駆け巡るのだ。
横たえたままの姿勢で3~4分が過ぎただろうか。
「歳を取ると時が経つのが速い」と言うが、
その体勢での3~4分は私の人生の中でも
5本の指に入るほど長い時間だった。
それと、動けなくなると思うと、横たえた体の、
下になっている右脇腹から右ふくらはぎまでの部分が
ジリジリと痛み始めた。その感覚は時間が経つほどに鋭敏になる。
早くこの姿勢をやめなければ褥瘡が出来てしまう…。
余分な脂肪がついているので栄養状態は悪くはないが、とにかく痛いのだ。
とそのとき、もうひとつの恐怖が私の頭のなかを占領し始めた…。
いや、正確には下半身に、である。
…尿意をもよおしてきたのである。
突然の小説風。
よかったらお楽しみください^^