(前回はこちら 。)


ショートステイ先の職員さんにきちんと座位がとれるイスに

お願いしてから、2週間が経った頃でしょうか。

娘さんからお電話がありました。



「2、3日前から急に食欲が無くなってきて、

診察を受けたいと思うんですけど…。」という電話でした。



お歳でしたが、食欲だけは若者並みだった倉本さんがなぜ?





「あいかわらず背中も痛がるし、内科と整形、

どっちに受診したらいいですか?」



「そうですね、まずかかりつけ医のところで診てもらって、

それから判断してもらいましょうか。」と私は答えました。



ということで、一緒に倉本さんたちとかかりつけ医さんへ行きました。

そこで先生は、レントゲンと診察をされた後、

「内科を紹介しましょう。そちらで検査してもらってください。」と

言われました。



娘さんは「背中の痛みはどうですか。なにが原因ですか?」と

尋ねましたが、「レントゲンでは異常ないよ。

湿布を出しておきましょう」と、答えられただけでした。


娘さんは少し不服そうでした。

「背中が痛くて食べられないかなあ、と思ったんだけど。

食欲が無くなったのと、背中を痛がりだしたのと同じ時期だったし。」と

話しました。



点滴を受けていた倉本さんは、

エビのような格好で目をつぶって、じっとしていました。







そして次の日、娘さんから電話がありました。

「病院に行って検査してもらいました。

ビックリしました。胃ガンだ、って言われました。」。



私もビックリして、返す言葉が見つかりませんでした。



「写真を見せてもらったんですけど、ボコボコした物があちこちに出てて、

食べ物が通るところは、ほんのわずかで。

「よくこれで食べれてたなあ」って、先生に言われました。」ということでした。



倉本さんはすぐに入院されました。余命は長くても3ヶ月だ、といわれて、

最期までその病院で診てください、とお願いしたそうです。








1週間後、倉本さんのお宅にお邪魔しました。



「入院した次の日まで痛がっていたんですけど、

パッチを貼ってもらってから痛みが無くなったみたいで、

「俺はなんでここにおるだ?」って言ってますよ。

ぜりーなんかだったら食べられるみたいだし。

背中の痛みもガンのせいだって。ビックリしました。」。


長く続いた介護でお疲れだっただろう娘さんは、

少しホッとした表情をされていました。



でも、「お正月もふつうにお雑煮を食べていたし、

今でも信じられないですよ。」と言った時、

娘さんの目には少しだけ涙が浮かんだように見えました。


(おわり。)



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