まず歯ですが、歯は食べ物を細かくする機能を持っています。
(これは皆さん、よくご存じですね。)
歯でかみ砕いて、食べ物を細かくすることを
咀嚼(そしゃく)
と言います。
一方、食べ物を飲み込むことを
嚥下(えんげ)
と言います。
咀嚼をすると唾液が分泌されて、食べ物と混ざります。
唾液には水分のほかにムチンと呼ばれる粘液が
含まれています。
このムチンが食べ物を包んで
飲み込みやすくしてくれるのです。
ちなみに顎は上下するだけでなく、
前後左右に動かすことができ、
食べ物をかみ砕き、すりつぶしたり
することができます。
ところで、お年寄りで義歯が
「ない・合わない」という人は割と大勢います。
義歯を作ることを勧めても、
「オレはもう歳だけ、作らんでええわ。」
という言葉は、年寄りの常套句です。
でも、若い方は歯がないと
10歳ぐらいは老けて見えますし、
食べ物は丸呑みになります。
中には、歯茎(はぐき)で食べ物を細かくする「つわもの」もいます。
それはそれで良いらしいですが、
できれば義歯は作っておいた方が良いようです。
私には苦い経験があります。
私が歯科受診を勧めたAさん。
治療が長引いて、奥さんから
「前歯を治したから、もう止めます。」
と言われ、
奥歯を治さないまま、
終了してしまいました。
立派な前歯と奥歯なし。
Aさんは、前歯だけで物を食べるようになってしまいました。
皆さんもやってみてください、
前歯だけで物を食べる不自由さを。
下顎をやや突き出すような格好になって、
食べにくいのです。
顎もずれてきます。
やがてAさんは食べられなくなって、
入院してしまいました。
「治療するなら全部の歯を」
と私が教訓にしていることです。
歯の評価は、
歯がそろっているかどうか、ということを見る他に、
義歯の一部が歯茎に当たって、痛みや潰瘍になっていないか。
歯茎が出血、腫れていないか。
歯に食べカスが残っていないか。
などを見ます。