次に薬物療法について、です。
まずは血圧を下げる降圧薬です。腎不全になると血圧が上がるのは、腎機能が一生懸命働こうとして血圧を上げて糸球体を酷使するからです。
そうすると、糸球体毛細血管の動脈硬化が進行して、やがて過労死することになります。このように、高血圧は腎不全を進行させるので、血圧はしっかりとコントロールすることが必要です。
利尿剤もよく使用されます。腎不全はおしっこが出ない状態なので、薬の助けによっておしっこを出し、むくみをとるなど、腎臓の負担を減らすのです。体内の余分な水分を出すと血圧を下げることにもつながります。
その他、貧血の人にはエリスロポエチンというホルモンを増やす薬、骨が脆くなっている人にはビタミンDを活性化させる薬、リン・カリウムの増減に対しての薬などが症状によって投与されています。
食事療法、薬物療法をしましたが、それでは間に合わないほど腎機能が悪化している。通常の機能の10%以下になると透析治療の適応になるようです。
透析療法には血液透析と腹膜透析の2つの方法があり、日本では血液透析が主流です。
血液透析は血液を体外に出し、ダイアライザーという人工腎臓に腎臓の役割をさせるものです。血液透析は設備の整った病院に通わなければなりません。血液透析は週2~3回、一回あたり3~5時間の時間が必要で、社会生活が制限されてしまいます。
体外に血液を出すところにシャントというものを手首の近くに作ります。これは、動脈と静脈とをつなぐ手術を行います。つなぐ理由は、動脈からの血液を静脈に流して、静脈の血液の流れをよくするためです。ですからシャント部に傷をつけたりしてはいけません。
腹膜透析は、専用の管を腹腔内に入れて、そこから透析液を流し込み、腹膜を透析膜の代わりにして尿毒物質、過剰な体液、電解質の調整などを行う方法です。これは自宅でもできるそうですが、適切な手技、衛生面の管理などが難しいようです。
透析療法を選ぶのもその人の人生観に依拠すると思います。少しでも長く生きたい人にとって透析は絶対的な選択肢となるでしょうが、そこそこの寿命でよい、という人にとっては日常生活が制限される透析をあえて選ぶことはないと思います。長く生きたいのか、そうでもないのか、命の価値は千人いれば千通りの考え方があると思います。