謝辞の原点

以前司会を担当した披露宴。

新郎さんの謝辞がすごく自然だったんです。

冒頭には、

「ここでどんな挨拶をするのか、

　全然考えてきませんでした」

と話し始めたものの、そんなことを

ま～～～ったく感じさせないくらい、

「自然に伝わる謝辞」でした。

その新郎さんは、

こんな流れで話されていました。

（ちなみにこの方はお医者さんです）

『僕は日頃から感謝の気持ちを

　伝えるのが苦手で、

　お世話になっている皆さんへ

　きちんと「ありがとう」の気持ちを

　言葉にしていなかったと気付きました。

　少し長くなってしまうかもしれませんが、

　ここに集っている皆様へ

　感謝を伝えさせてください。

　医師としての大先輩である先生方。

　皆さんは私の理想であり、目標です。

　患者さんに真摯に向き合うその背中から、

　多くのことを教えていただいています。

　これからもよろしくお願いします。

　医局秘書の○○さん。

　仕事の傍ら研究ができたのは

　○○さんのおかげです。

　その甲斐あって僕の年収も上がりました。

　だからこそこうして皆さんに喜んでもらえる

　結婚式ができました。

　ありがとうございます。

　同僚医師の○○さん。

　大変な患者さんの症例に

　ふたりで頭を悩ませ、

　議論を交わしたこと。

　あの時間を絶対に忘れません。

　○○さんとは同僚の域を超えて戦友です。

　これからも共に戦いましょう。

　大学時代の友人のみんな。

　中学・高校となかなか腹を割って

　付き合える友人に巡り合えなかった僕に、

　みんなの存在は希望をくれました。

　旅行の話も僕が幹事になってから

　実現できずにいますね。

　今年中に必ず行きましょう。

　絶対に計画します。

　そして、弟。

　けっして仲が悪いわけではないけど

　物理的距離が離れていることと、

　僕が仕事にかまけすぎていて、

　ずっとゆっくり話すこともなかったです。

　これからは少しでも兄らしいことを

　したいので、子供の時のように

　色々話しましょう。

　両親。

　4人の子供を育てながら、

　そのうちの一人を医学部に通わせる。

　それがどれほど大変な事か。

　今ならそれがよくわかります。

　僕の願いを叶えるために信じてくれて、

　何不自由ない環境で勉強をさせてくれて

　ありがとうございます。

　○○さん（新婦さん）の

　学生時代の友人の皆様。

　○○さんから学生時代の話を

　よく聞かせてもらっているので、

　今日は初めてお目にかかった感じが

　しませんでした。

　皆さんは僕が埋めることのできない、

　○○さんの人生を豊かにする

　大切な存在の方たちです。

　これからもよろしくお願いします。

　○○さんのご両親、ご親族の皆さん。

　いつもアットホームな雰囲気で

　明るい皆さんと家族になれて

　嬉しいです。

　○○さんと一緒に楽しい時間を

　過ごさせてください』

こんな感じで、

それぞれの方に向けての思いを

語りかけるように

優しく話していた新郎さん。

普段伝えられない気持ちを

伝えたいという明確な意思が

あったからこそ、

その場で言葉を選びながらも

とんでもなく印象に残る

謝辞になっていました。

これこそが謝辞の原点であるかのような

そんな光景を見せてもらえました。

飾り立てた言葉や、

普段言い慣れない言葉を

羅列した挨拶よりも、

いつも通りの語り口で

想いを伝えることが

どれほどまでに人の心に届くのかを

垣間見た瞬間でした。

いつもいつも思う事ですが、

「結婚式ってやっぱりいいなぁ・・・」

と、再認識させてもらえるような

心のこもった自然に伝わる謝辞でした。

本日も結びまでお読みいただき

ありがとうございます。

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