
いくつになっても誕生日って特別。プレゼントやサプライズがなくてもなんだかしみじみしちゃう。そこにこの曲が合わさると、“ありもしない思い出”にすら涙しそうになる。
♪このままーきょおがおわりあすーがくれーばー♫ラストへなだれ込むあたりの盛り上がりで今日の主人公徹子は、熟したフライパンにオリーブオイルを回し入れた。
「ん?」なんか目に飛んだ感じが。目に入った?イヤ、でも痛くないし。あと15分で旦那さんが帰ってくるのにまだメインのおかずができてないことに徹子は焦りを覚えていた。いちいち、目なんか洗ってられない。それがマズかった…
夜寝る前に何か目の表面に「ビキッ」と衝撃が走った。
「へっ?」
あわてて洗面台に走ると、右目の黒目の下が赤く充血している。
はー、良かったー
単なる疲れ目か…
油のことはすっかり忘れていた。そして翌朝、鏡を見てギョーテンした。
何じゃこりゃああ!
右目の黒目の下に直径5mmくらいの「コブ」ができていた。
ひいいいいい
楳図かずお先生のSOULと共鳴しそうなオールドファッションな叫びが洗面所にこだました。幸い土曜日だったので「叫び😱」にドン引いた旦那さんが眼科に連れて行ってくれた。
エグいビジュアルに看護師さんもショックを隠せていなかったが、その割に診察はサラリと終わった。
「あ、表面がめくれてる感じですね。大事には至ってないかと」殺菌用の目薬でカタがついた。それから3週間。そのまま残った「はれもの」は今日、眼科医の手で「ぷちゅん」とつぶされ御用となった。はれものが再発する可能性もあるが、眼科的にはやはり「大ごとじゃない」そうだ。
はー。視力びろいした。医師も「視力に関係ないところで良かったですねー」としきりにうなずいていた。その様子を帰りのバスで思い出しながら、徹子はハタと気づいた。
もしかして、これは…
バースデーギフト!?
よりにもよって57回目の誕生日に生まれてはじめて起きたインシデントは、私にしばし考える時間をくれた。私は調理師免許を目指して厨房のバイトをしていた時期がある。人より油ハネ経験は多いはずだ。それなのにこんな事は今まで一度もなかった。まあ、57年でいちばん年を取ってた日だから、今まででいちばん反射神経が鈍ってたとも言えるのだが、しかし…
なぜか高いところから
目を大切にしなさいよ。曇りなき目で世の中をしっかり見なさい。
と言われているような気がしてならなかった。もしあの時視力を失っていたのなら、私はきっと「いくらでも努力しますから、もう一度視力をお与えください」と空に向かって懇願していただろう。
「視える」って、どういうこと?
雲ひとつない空を見上げて、私は思う。
なぜ、空は青いの?
もう、イミなんかどうでもいい。
視える…![]()
夏空の青さに、気づくと涙があふれていた。