せっかく研修を兼ねた通訳アシスタントの仕事に就けて、デビュー直前だったのに。そこで派遣切りの嵐が吹き荒れて。

ギャーッハッハッハ。

いきなり美智子さんが手を打って笑った。
何だかホッとして私も爆笑した。

ひどいでしょー。でもね、前からその工場に派遣されてた英語系の仕事の先輩たち、20人全員解雇されたんだって。アシスタントの私なんてひとたまりもないですよね。


アンタもなんやね!うちらもやられたよ。まあよくあるハナシよね。ギャーッハッハッハ!

私はなんとか残ってるけどスライド(同じメーカーの別工場に移る事。エアコン組み立ててた人が同メーカーの洗濯機の組み立てに行くような感じ)させられた人と完全解雇の人もいる。サチはまだ同じチームだよ。

そう。元がフリーターの私は解雇通知にも別段驚きはしなかった。派遣会社の事務所で通告を受けても、

あ、わかりました。経験のない私にもチャンスを下さって感謝しています。また機会がありましたらご連絡くださいね。

と余裕の挨拶をぶちかまし、泣きそうな表情で謝る担当のお姉さんを困惑させた。そしてその足でコンビニに直行するとアルバイトのフリーペーパーをあるだけ取り、ファミレスに持ち込んで一人就活祭りに勤しんだ。なに、慣れっこの作業だ。気になった求人を蛍光ペンで囲んでページごと破り取り、ピックアップ作業が終わると片っ端から電話をかけて面接予約を取りスケジュール帳に書き込んでいく。求人が激減した事でどの求人雑誌も以前の3分の1くらいの厚みになっていて、世相の深刻さがリアルに感じられた。


そうして1週間後には見事週6のスケジュールが埋まった。朝は7時〜10時ファミレスのモーニング担当。11時から15時まではマックのランチ担当。いったん帰宅してスーツに着替え、17時〜21時は個別指導の講師。

新しい生活がスタートして慌ただしい中、派遣会社のお姉さんが電話をくれた。

お仕事の方は…いかがでしょうか。弊社でも、英語の仕事は難しいですがやっと作業系のお仕事を頂きまして。

なんとか埋まりました、ありがとうございます。

お姉さんは本当に喜んでくれた。

えええ!すごいですね。行動力が違います。ご多忙かと思いますが、お話伺いたいですし、以前作業系のお仕事をされていた方が在籍していますとお話しましたら、先方もぜひとおっしゃるんです。もしよろしければお仕事概要だけでも。

なんてありがたいのだろう。大変な中一生懸命、営業してくれたのだろう。バイトの合間に事務所に行ってみると、お姉さんが笑顔で迎えてくれた。


期間限定ですけど。新茶の包装のお仕事なんです。

手渡された資料を見て何だか笑みがこぼれた。
ここは、お茶どころ、静岡。

せっかくなんですけど、長期で探していますので。でも、…行ってみたいなぁ、ここ。お茶の良い香りの中でお仕事できそう。

そう、深蒸し茶の香り。

静岡ジモティのお姉さんが誇らしげに付け加え、二人で笑った。


何だか、明るいみどり色の元気をもらえたような気がした。