数学の乗法の定義は, 2つの因数は対等ではなく,因数の順序がある | メタメタの日

 

資料:

現代数学における乗法の定義では, 2つの因数には違いがあり,因数の順序があること。

 

(1)デデキント(1880)『数とは何かそして何であるべきか?』(第6版1930)ちくま学芸文庫121頁

   数の乗算  提議

        m.1=m

              mn´=mn+m

 

(2-1)ペアノ(1889)『算術原理』https://books.google.co.jp/books?id=v4tBTBlU05sC&pg=PAPA83&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false 96頁

   乗法 定義

      1.  a∊N . Ɔ . a×1=a

             2.  a,b∊N . Ɔ . a×(b+1)=a×b+a.

                 ab=a×b ; ab+c=(ab)+c ; abc=(ab)c.

 

(2-2)ペアノ(1891)『数の概念について』(共立出版『現代数学の系譜2』131頁)

  積の定義

      a,b∊n. ⊃. a×b=0[(+a)b]

      「a×bとは0に右作用演算(+a)をb回だけほどこしたものとする」(小野勝次解説)

(3-1)高木貞治(1904)『新式算術講義』ちくま学芸文庫26頁

   「同一の数aを幾回も加へ合はせて得らるべき和は此数と加へ合すべき回数bとによりて全く定

   まるべし。(略)此算法は即ち乗法にしてaは被乗数,bは乗数,求め得たる和はa,bを乗したる積

   (a×b又はab)なり。(略)乗法の意義は次の式により明に書き表はさる。

        a×1=a

        a×b=a+a+a+…+a

                      (1)  (2)  (3)  …  (b)

 

(3-2)高木貞治(1949)『数の概念』講談社BLUEBACKS 38頁

    乗法  定理

      任意の数aに関して,xの函数f(x,a)が

         f(0,a)=0 

           f(x+,a)= f(x,a)+a

    なる条件によって,一意的に定められる。

    f(x,a)が即ち積xaである。(乗法の定義)

 

(4)彌永昌吉(1972)『数の体系』岩波新書78頁

    自然数の乗法   定義

        x・1=x,

        x(y+1)=xy+x

  

(5)遠山啓(1972)『代数的構造』(日本評論社新版1996)113頁

     積

        x・y(xyとも書く)はつぎのように定義する。

           x・1=x,

           x・y=xy+x

 

(6)足立恒雄(2002)『数 体系と歴史』朝倉書店

     定義(自然数の乗法)

       まず任意の自然数mと0との積m・0は0であると定義する。

            m・0=0

       次に,mとnの積m・nが定義されてとき,mとn´の積m・n´を

            m・=m・n+m

       によって定義する。

 

 

  以上,(1)から(6)の8文献の乗法の定義が,表現に違いがあっても,同趣旨になっているのは,いずれもがペアノの公理系に立脚しているからでしょう。

  因数の順序は,高木1949のみが,乗数・被乗数で,他はすべて,被乗数・乗数