現在使われている,平成19年検定済の東京書籍の数学Ⅰ,Ⅱ,Ⅲの教科書によると,文字式は次のように分類されます。
文字式
(1)有理式
(1-1)整式
(1-1-1)単項式
(1-1-2)多項式
(1-2)分数式
(2)無理式
となりますね。単項式と多項式を区分しない考え方があることも注意書きしていますが。
さて,すべての分類がそうであるように,文字式の分類でも,境界事例というか,どこに分類すべきか判断に迷う式があります。
χ^2-3
――――
χ+1
は,分数式だが,(χ^2-3)÷(χ+1) は何なのか。
教科書は,「整式の除法」と呼んでいます。
ただし,昭和60年版の東京書籍の数学Ⅰでは,この形の式は出てくるが,現行版では÷を使った(多項式)÷(多項式)の式はなく,「整式Aを整式Bで割ると」と文で表現して,縦書きの割り算の計算で表していますが。
(a+b)(c+d) という式は,展開すれば多項式だが,展開する前の式は何なのか。
『新式実用代数学教科書』1921年では,
{15(x+y)^3(x-y)^2-10(x+y)^2(x-y)^3}÷5(x+y)^2(x-y)^2
を,「多項式を単項式にて除する法」の中の問題に挙げていて,直後の「多項式を多項式にて除する法」の中には挙げていないところをみると,この本では, (a+b)(c+d) という式は単項式とみていますね。
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a^3
a^3÷a^2=――=a
a^2
は,第1式が「単項式の除法」,第2式が「分数式」,第3式が「単項式」でしょうか。
a^3÷a^2 について,「単項式÷単項式」とみない考え方が提起されました。
「 a の単項式でないとき
a^3 ÷ a^2 = a × a × a ÷ a × a = a^3 」(306番)
中学高校の教科書の文字式の規則(「立場1」)を採らず,「a÷bc=a÷b×c」とする「立場2」でも,「a^3÷a^2=a」は認めていたので,不可解だったのですが,「a^3÷a^2=a^3」とする立場(かりに「立場3」と呼びます)もありうるとは了解しました。しかし,それにどういう価値や意味があるのだろうか,という疑問は残ったままです。
立場1~3の違いはどこから生じるのか,という問題ですが,「文字式の表し方の規則」については共通の理解があるでしょう。(誤解があったら指摘してください。)
つまり,
(1)加法,減法の+,-は,省略しない。
(2)乗法の×は,省略する。
(3)同じ文字の積は,累乗で表す。
(4)除法の÷は,分数の形でかく。
という文字式の表し方は,OKである,と。
×÷+-の記号を使って表されている式を,上の規則で文字式に書き直すことは,立場1~3に違いは生じない。違いが生じるのは,×÷を使った式に,×÷を省略した式が混ざっている場合です。
ただし,×の後に,省略した積や商(分数)の式があっても,÷の後に商(分数)があっても,解釈の違いは生ぜず,文字式の表し方の規則に則って,同じ式に至る。(立場3の,私の理解が不安ですが)
違いが生じるのは,÷の後に×を省略した積がある式の解釈です。
つまり,
a
(立場1) a÷bc=a÷(bc)=―
bc
ac
(立場2,3) a÷bc=a÷b×c=―
b
また,
a^2
(立場1,2) a^2÷a^2=a^2÷(a^2)=―=1
a^2
(立場3) a^2÷a^2=a×a÷a×a=a^2
だから,学校教科書の文字式の規則が「立場1」であって,「立場2」や「3」でないことを示すには,a÷bc=a÷(bc)であることを示す必要があります。
文字式の表し方の規則(1)~(4)を教えるときに,重要な補足として,a÷bc=a÷(bc)であることを教えなくては,教科書の規則を,立場2や3と「誤解」したまま,中2の「単項式の除法」まで1年間を過ごすことになり,中2で「単項式の除法」の規則を教えられても,中1のときの「表し方」の規則と整合がとれていないと思う生徒が出てきますし,実際,前トピでそう発言されている方がいました。
以上が,前トピで,「立場1」のルールに対する怨嗟の声を一人ならずから聞いてびっくりして,どこにその原因があるのだろうと,ゆとり教育時代の教科書を見直して気付いたことです。
(2011年5月23日追記。「立場3」は,提起者ご自身が,mixiで撤回されました。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=62234794&comment_count=368&comm_id=63370
358番)