こんな問題は出してはいけない――算数・数学の先生必見! | メタメタの日

 子どもの頃理由が分からないまま、何かヘンだと違和感を感じ続けていて、大人になってから、数教協の本(特に遠山啓の本)で、「分離量/連続量」という図式を知って、氷解した疑問。

 

(1)今水槽に水が5ℓ入っています。1分間に2ℓずつ排水され、1ℓずつ入水すると、水槽が空になるのは、今から何分後ですか。

 5÷(2-1)=5  5分後 

この問題は何も問題はないのです。水量も時間も連続量です。


(2)今教室に5人います。1分間に2人ずつ教室から出ていき、1人ずつ入ってくるとすると、教室が空になるのは、今から何分後ですか。

 こういう問題になると、私は(子どもの頃も、今も)戸惑うのです。

 1分間のいつ人が出て行き、いつ入ってくるのかを考えなくていいのか。考えると答は何通りも出て来るのではないか、と。

 出題する人は、(1)と同じ式で、5分後と答えさせたいのでしょう。

 しかし、具体的な状況を考えると、そうは問屋が卸さない。4分後の時点、そして5分目の開始時点では1人ですが、この1人がいつ出て行くのか、5分目に入ってくる1人がいつ入ってきていつ出て行くのかを考えると、悩みます。少なくとも私は(子どもの頃も、今も)悩みます。

 出題者は、1分間のいつか、などと1分間の内部を考えなくてよい問題として出題しているでしょう。つまり、時間も人数も分離量として考えているのです。

 しかし、分離量で考えるのなら、分離量ということがはっきりする次のような問題にしてほしいと思うのです。


(3)今Aはおはじきを10個、Bは5個持っています。1回ごとにAには1個、Bには2個ずつおはじきを渡すと、2人のおはじきの数が同じになるのは何回後ですか。

 これなら、回数も個数も分離量で、回や個を分割して内部を考えなくてよいことがはっきりしています。 この問題の解き方は、次の問題と同じ考え方になります。


(4)今AはBの5km先にいます。Aは分速1km、Bは分速2kmで同じ方向に進むと、Bは何分後にAに追いつきますか。

 道のりも時間も連続量です。

 そして、(3)が分離量、(4)が連続量、という量の違いは、次のような問題になると答が違ってきます。


(5)今Aはおはじきを10個、Bは5個持っています。1回ごとにAには1個、Bには3個ずつおはじきを渡すと、2人のおはじきの数が同じになるのは何回後ですか。


(6)今AはBの5km先にいます。Aは分速1km、Bは分速3kmで同じ方向に進むと、Bは何分後にAに追いつきますか。


 (6)は、5÷(3-1)=2.5  として2分30秒後と答られるでしょうが、(5)は、「答なし」と答えるしかないでしょう。


 (2)の問題の出題者は、時間も人数も分離量で考えれば良いと思っているのでしょうが、次のような問題になると、そうとばかり言っていられないはずです。


(7)今教室に5人います。1分間に3人ずつ教室から出ていき、1人ずつ入ってくるとすると、教室が空になるのは、今から何分後ですか。

 この問題は、次のように、連続量の問題なら、何の問題もないのです。


(8)今水槽に水が5ℓ入っています。1分間に3ℓずつ排水され、1ℓずつ入水すると、水槽が空になるのは、今から何分後ですか。

 (8)は(6)と同じで、5÷(3-1)=2.5  として2分30秒後と答られるでしょうが、(7)は、どうなるのでしょうか。2分後の時点で1人です。次の3分目について考え出すと、人は分離量でしか考えられないが、時間は連続量でも考えられるという悩ましさで、戸惑わないでしょうか。

 人は分離量、時間は連続量という悩ましさは、行列の問題になるとさらにはっきりします。(行列の問題については、以前も触れましたが)


(9)窓口に人が5人並んでいます。今から1分間に2人ずつ行列が無くなり、1分間に1人ずつ加わると、窓口に初めて人がいなくなるのは、今から何分後ですか。

 この問題も、次のように、連続量の問題なら、何の問題もないのです。


10)今水槽に水が5ℓ入っています。1分間に2ℓずつ排水され、1ℓずつ入水すると、水槽が空になるのは、今から何分後ですか。


 しかし、(9)は、30秒ごとに行列が1人減るわけで、時間の「分」は単純に分離量と考えるわけにはいかなくなっています。すると、加わる人も、1分間のどこで加わるかを考えざるをえなくなります。

 1分間の最初だとすると、4分後に1人ですが、「4分後=5分目の開始時」に2人です。そして、5分後に0人ですが、5分後=6分目の開始時に1人です。そして、5分30秒後に窓口に初めて人がいなくなるはずです。

 1分間の最後だとすると、「4分後=5分目の開始時」に1人で、4分30秒後に窓口に人がいなくなります。

 1分間の途中の場合は、ちょうど真ん中も含めて前半に加われば、5分後に窓口に人がいなくなりますが、後半に加わるとすると、4分30秒後に窓口に人がいなくなるはずです。


 このように、問題文中に出てくる量が、連続量でも分離量でもどちらかに統一されていれば、悩まずにすむのですが、連続量と分離量が混ざっている、あるいはそのように考えざるをえない問題では悩まざるをえないし、悩む子の方が、こういう問題を無自覚に出題する教師・講師より、正しい、と思う。