Common knowledge | メタメタの日

 「Google入社問題」をめぐる議論も開始以来一ヶ月に近づき、ようやく冬を迎えたようです。

 私は、途中で、これは「電車男ロジカルシンキング版」ではないかと思いました。みんなでよってたかって「Google入社問題」をネタに盛り上がる。あるいは、「文殊の知恵mixiヴァージョン」。

 冬とは、今までの季節の来し方を振り返る季節でしょう。

 春は、「Google入社問題」をどう解釈するのかが問われた時期でしょう。この村はどういう村なのか、女王は浮気していないのか、問題の条件が不備ではないか、などと議論されました。ほとんどの人が、女王宣告があっても、何も起こらない、と答えました。女王は誰もがすでに知っていることを述べただけなのだから、と。私もそう思いました。しかし、それでは、面白くないと考え直して出した私の答は、「すべての夫が村から逃げ出す」でした。でも、この段階の最高の答は、ハリーほったさんが紹介された「とりあえずものすごいいやな空気になる」でしょう。

多くの人が、「夫婦」「浮気」「女王」「殺人」などという人間くさい要素にめくらましにあいました。しかし、この問題は、論理パズルとしては、帽子問題と同じではないかということが分かっていき、早い段階から、「100日目に全ての夫が殺される」という「正解」を書かれていた人がいました。私は、けっきょく一ヶ月近くかかって、この正解にたどり着いたわけですが、負け惜しみを言うなら、時間がかかって、あちこち寄り道したおかげで、いろいろな風景が見られた。

問題の意味が分かった段階で夏のステージを迎えます。「正解」の証明は、2人の場合、3人の場合の説明から、あとは「数学的帰納法」で証明できる、というものでした。しかし、これでは4人の場合は証明できないのではないかと、ワイネフさんが疑問を投じられて、「帽子問題」の派生トピを立てられ、夏も本格化していきました。

私的には、「帽子問題」トピでのWhiskyさんの1番発言で、一気にブレークスルーしたのですが、「4人証明不能説」のワイネフさんを、KiLiさん、NatcHさん、Whiskyさん、miZ-yanさんら何人もの論客が説得したのですが、ワイネフさんの反論も強固で、誰も説得できず、ワイネフさんも納得せず、休止にしたいと言われて、夏は秋に移って行きました。でも、まだしばらくワイネフさんは発言を続けます。

秋は、意外と短く過ぎました。夏の段階から話題になっていた、「ワープ説」が浮上しました。信念を持った主張者はmyinyaさんで、動揺しつつ賛意を表したのが、私メタメタですが、私は、じきに「ワープ説」を撤回し、myinyaさんも発言されず、一気に冬の到来です。


春の段階で、日本語の問題文が意味不明のところがあるため、英語原文、また、この問題の原典である、ガモフ&スターンの原文も紹介されました。

Wikipedia英語版で「Common_knowledge(logic)」を検索すると、私たちが到達した結論が書かれています。

そこにある、例題は、緑色の瞳と青色の瞳を持った島の住民の話になっていて、Googleやガモフの浮気配偶者の殺害や、赤い帽子・白い帽子や、顔が汚れた子どもの話より、はるかに美しい。

Common knowledge (logic)

このトピでは「共通認識」と呼んで議論してきましたが、グローバルスタンダードは、“Common knowledge”と呼ぶようです。

キーポイントは、個々には●を認識していても、全体の共通認識がないということです。

つまり、「不特定の●の数についての共通認識がある」という命題は偽ですから、偽の命題からは、正しい推論でどんな結論が導かれても不思議ではない。たとえば、「4人の場合は、2人が共通認識である」という偽の命題から「4人の場合は証明できない」という偽の結論、「100人の場合は、97人が共通認識である」という偽の命題から「98日目にワープできる」という偽の結論が出てくることも、根は同じだったのです。

「数についての共通認識はない」というのは、直観的には納得しがたいが、背理法で証明されると反論できない。n人が少なくともm人の存在を共通認識しているとすると、誰もが少なくともm人を見ていることとなり、((m-1)人を見ている人は自分が●を分かるから)、少なくとも(m+1)人の存在を共通認識としていなければならないことになり、前提と矛盾する。

とは言っても、赤い帽子をかぶった子どもが広場にうじゃうじゃいて、お互いの赤い帽子を見ている。誰もが個々には、誰もが赤い帽子をかぶっているのを見ている。白い帽子をかぶった子どもがいないのだから、誰も白い帽子など見ていない。しかし、しかし、赤い帽子の子が最低何人いるということが共通認識Common knowledgeにならない。それは、外から、アナウンスされないと、Common knowledgeにならない、というのはどうしても不思議だ。

この錯覚から、私は、最初は何も起こらないと思い、次は、2人3人の場合は証明できても4人の場合は証明できないのではないかと思い、証明できると分かったら、今度は97日も待つ必要はないのではないかと考えてしまった次第です。