MOTORHEAD / ACE OF SPADES | おネギさんの温故知新 「俺の山河は美しいかと」

MOTORHEAD / ACE OF SPADES

If you like to gamble, I tell you I'm your man
You win some, lose some, it's - all - the same to me
The pleasure is to play, it makes no difference what you say
I don't share your greed, the only card I need is
The Ace Of Spades
The Ace Of Spades

Playing for the high one, dancing with the devil,
Going with the flow, it's all a game to me,
Seven or Eleven, snake eyes watching you,
Double up or quit, double stakes or split,
The Ace Of Spades
The Ace Of Spades

You know I'm born to lose, and gambling's for fools,
But that's the way I like it baby,
I don't wanna live forever,
And don't forget the joker!

Pushing up the ante, I know you've got to see me,
Read 'em and weep, the dead man's hand again,
I see it in your eyes, take one look and die,
The only thing you see, you know it's gonna be,
The Ace Of Spades
The Ace Of Spades















[対訳]


もしギャンブルしたいなら
相手ならここにいる
たとえ勝とうが負けようが
どっちも俺には同じこと
勝負すんのが楽しいんだよ
結果にゃ左右されないね
金のために勝負する
ヤツとは一緒にしないでくれよ
俺の望みはただ一つ
スペードのエースだけ
勝負に勝ちたいだけなんだ



セコい勝負にゃ手を出さないし危ないことも承知の上で成り行きに任せてくそういうことがひとつ残らず俺には「勝負」そのものなんだ勝ち目の7か11か *サイコロの1のゾロ目が睨んでるポーカーの賭け金はどうすんだ?倍賭けするのか降りるのか賭け金を倍にするのか山分けか?スペードのエースのカードが決めるんだ
わかってるどうせ勝てやしないってギャンブルをやるのはバカなヤツばかりだけどそこがいいんだよ別にいつまでも長生きしたいわけじゃないそれに勝負は終わりじゃないぞジョーカーを忘れんな!

賭け金を上げていくお前が望んでいることくらい俺にはちゃんとわかってるこの俺が手元の札に目をやってショボい手だって気が付いて泣き出すとこが見たいんだよな?そんなことお前の目を見りゃわかるんだだけど悪いなそういくかこれ見てさっさと諦めろこれからお前が拝むのは最強の切り札のスペードのエースなんだから




[解説]


モーターヘッドの名曲「エース・オブ・スペイズ」。

歌詞を分析する前に、いくつかの説明をしておきたい。


■スペードのエース
まず、<スペードのエース>について考えてみたい。

スペードは、剣を図案化しており、騎士、王侯・貴族を象徴している。

だが、一方では、デスカードとも呼ばれ、死を象徴し、不吉なものとされている。
実際、レミー将軍も「スペードのエースは、Bad luck(不運、悪運)だから」と語っており、インパクトあるモチーフだったことが分かる。

また、エース=1のイメージもあるが、1と言うよりは、切り札や絶対的な強さを意味している。

髑髏や鉄十字がアウトサイダーのシンボルとして用いられたように、スペードのエースも縁起の悪いものだからこそ、モーターヘッド的アウトサイダーの象徴として用いられたのだろう。自分たちが何者であるかを示すシンボルなのだ。


■Seven or Eleven
セブンイレブンというサイコロを壁に投げて、出た目を競うギャンブル。文字通り、7と11がもっとも強い。


■Snake Eyes
これは、爬虫類の蛇ではなく、サイコロの目を意味している。
ピンぞろ、2つのサイコロが両方とも1の目になっている状態。
もっとも少ない数値なので、縁起が悪いものとされている。
赤い目をした蛇に睨まれちゃったみたいな感じかな。


■Joker
ブレイク部分で、自らの運命を語った後、<And don't forget the Joker!>と言い放たれる。

このジョーカーは、ジョークや気楽さという意味もあるだろうが、大事なことや大切にすべきものなどを意味しているとも考えられる。また、ジョーカーはエースに対立する存在であり、エースになるか・ジョーカーになるか、勝者になるか・負け犬になるかはギャンブル次第とも読める。

だが、<And don't forget the Joker>と歌われていたのは、初期のころだけで、1980年代後半には、「Don't forget Bastards!」に変わり、1991年あたりから現在までは、この詞の語り手がレミー将軍自身であることを示唆するフレーズに変わっている。

この歌を聴いた人のほとんどが、レミー将軍自身の人生観だと感じていたに違いないが、どうやら、それは正しかったようだ。


■Dead Man's Hand
これは、死者や悪魔という意味ではなく、ポーカーの組み合わせである。

<デッドマンズ・ハンド>とは、エースと8のツーペア。1876年のアメリカ、連邦保安官ワイルド・ビル・ヒコックが、背後から撃たれて、死んだ時に手にしていたカードの組み合わせから、こう呼ばれるようになったという。

余談だが、同アルバムに収録されている「Shoot You in the Back」は、ここから来ているとも考えられる。

昔、私はドラクエのマドハンドのような悪魔の手をしたモンスターを想像していましたが、違いますよ。


■歌詞分析
では、実際に歌詞を分析してみよう。ただし、ここでは訳文を掲載せずに、私の解釈を書いた。

この曲は、ポーカーとギャンブルを使い、人生観について歌っている。

1番は、<自分>について。
他人がどうであろうと、動じない。何を言われても、俺は変わらないという決意。

2番は、<あなた>について。
悪事を働こうが、周囲に合わせようが同じこと。あなたはどう生きるのかを問いかけている。

ブレイク部分では、<自分の運命>を語っている。
アウトサイダーの末路を分かっていながらも、自分の生き方に後悔はないという覚悟。

3番は、<あなたの運命>について。
後悔しても遅い。あなたもどうするべきか分かっていたはずだと。自分の生き方を薦めているようにも思える。
ギャンブルの賭けるという行為は、自分自身の可能性に賭け、自分らしさを追求することとも重なる。

つまり、自分の信念を貫く決意、その結果どうなろうとも自らが受け止める覚悟を歌っている。

聴く人それぞれの人生に重なるだろうし、その時の心境によって、捉え方も違ってくるかもしれない。人生のヒントを得られる哲学的な詩なのである。

何かに悩んだ時、心の中で「ジ・エース・オブ・スペイズ」とか「アイ・ドント・ワナ・リヴ・フォーエバー」と唱えると勇気が湧いてくるのは私だけでないはずだ。悩みや迷いもふき飛ばしてくれる1曲だ。
20151231_4072013.jpg