性の搾取の場であった吉原を、アートの側面から見る、という事にジェンダー的視点から批判が多いこの展覧会。
入場直後の説明文にも、主催者側の苦しいスタンスが見え隠れしていました。
しかし、吉原を知らずして歌舞伎も浮世絵も理解できない。
かつての社会を現代の視点から批判し、そこから現代に連なる問題を改善しようとするのは絶対に必要だけれど、存在したものを「問題だ」として取り上げるのを避けることはあってはならないことだと思う。
ポリティカルコレクトネスは常に黒歴史の反省の上に成り立つのであり、そういう意味で解説に散見する、とってつけた的な「遊女の苦しみ」への言及を、ワタクシは笑うことはできない。
基本の展示室は浮世絵や浮世絵師による肉筆画を中心に、高橋由一の油彩画「花魁」や、明治期以降の写真など。
3階のジオラマのみ撮影可。
このジオラマ、1981年に制作された下町風俗資料館所蔵品。
この見事な楼閣は総ヒノキ造りで、ヒノキ細工師三浦宏氏によるもの。
人形制作は辻村寿三郎。ジュサブロー氏ですよ。
人形のモデルは、渓斎英泉の描く花魁や新造の浮世絵ではないかと。
決して歌麿や春信、清永ではないよねえ。
さすがはジュサブロー。人形に魂が宿っているようだ。
調度類製作は江戸小物細工師、服部一郎氏。
鯛の尾頭付きを始めごちそうの数々。
顔見世のための化粧をしているのか?
婀娜っぽい仕草でも表情は実に冷たい。
5月19日まで