6日から開催の鳥文斎栄之展。

江戸後期に活躍した旗本出身の浮世絵師、鳥文斎栄之。

 

栄之は、旗本として徳川家治の御小納戸役絵具方を勤めたのち、家督を譲って武士の身分を離れました。

彼の描く美人絵は、遊女や茶屋娘だけでなく、武家や公家等の上流の女性も多く、皆おっとりと気品のある風情です。

時は鈴木晴信の茶屋娘ブームが去り、浮世絵1枚に複数の遊女や茶屋娘を描いて艶姿を競うような浮世絵が多い時代。

旗本が描く美人画はその上品さに加えて紙質や絵具の良さなどもあって、富裕層に好まれたようです。

 

撮影可能な3枚のうちの1枚「川一丸舟遊び」。

美人勢ぞろいですね。

 

栄之は鳥居清長の系統の、8頭身、9頭身の美人の全身像が多く、同時代の歌麿の上半身主体の浮世絵とは良い対照をなしていたと言えるでしょう。

ほっそりとはしているけれど、肉体が充実しており、健康そう。

表情は茶屋娘にせよ遊女にせよ、穏やかで品がある。

 

「郭中美人競 大文字屋内本津枝」

猫が遊女のかんざしにじゃれついています。

表情が明るく豊かな印象。

 

「新大橋橋下の涼み船」

涼を求めて川遊びの美女たち。

本来なら、旦那衆が中心で、そこに花を添える芸者が数人、と言うところでしょう。

乗船客全員を女性にして、思い思いに楽器を楽しんだりしている和やかな様子が良いですね~。

 

春画の絵巻物も1点だけ出品されていましたが、こちらも品よく最初の2シーンのみ。

 

もっと時代が下る渓斎英泉のような、アグレッシブで退廃的な美人画になると、中々ちょっと、ついていけない部分もありますが、栄之の浮世絵は明るくおだやかで品がある。

今の時代には特に好まれるタイプかもしれません。

「再発見」と銘打って千葉市美が推しているだけのことはあります。

 

3月3日まで