前回の記事では、退職後の健康保険は、退職1年目は高いけど任意継続、2年目は退職する月にもよるが国保の方が安くなるだろうというお話だった。私は3月末退職をする予定なので、所得が賞与なしの3か月分の給与のみとなるため国保の方がお得となる。あとは、配当金や株式の売却益などの所得をどうするか、国保にはない健保のメリット(補助や保養所等)をどれくらい活用できそうか、を比べるくらいである。

1年目は給与が3か月分あり住民税非課税世帯にはなれない。そのため配当金を確定申告したほうがよいことは確実なのだが、2年目以降も配当金は確定申告をする予定である。住民税非課税世帯を狙うよりも配当控除を使って税の還付を受けた方が結局は総支払額は減るし、非課税世帯を維持できるかどうかの所得についていちいち気にする必要もなくなるからである。(将来的に配当金は有無を言わせず国保の所得計算に入れることにもなるかもしれないし。)

配当控除とは、配当金を総合課税として確定申告すると配当金の1割を税額控除できる制度である。税額控除なので、保険料控除等の所得控除とは違い、住宅ローン控除と同じように所得税額から直接その額を引くことができる。配当金を住民税のみ申告不要とする選択ができなくなってから配当控除を使うことがなくなったのだが、所得が低ければ十分にメリットがある。

 


給与と配当金のみの所得で2年目の国保の費用を軽く計算したところ、任意継続を続ける場合と年27万円くらいの差があった。いくら健保の方がいろいろメリットがあるといっても、27万円の差はどう考えてもひっくり返せそうにない。

逆に1年目の所得を増やす方向で、任意継続を続ける方がメリットにならないかも調べてみた。初めは株式や投資信託の譲渡益を入れることくらいしか思いつかなかったが、もう一つ所得を増やす方法があることに気づいた。あまり一般的ではないのだが、ストックオプションの権利行使である。

ストックオプションの種類にもよるが、私が持っているものは権利を行使した時点で利益相当額が給与所得として上乗せされ課税される。退職後の国保の費用に影響がないようにと退職の1年前には行使するつもりでいた。権利行使をした年は通常の年収に加えて利益相当額が給与所得に加わるため、額によっては所得税率が変わったり配偶者控除が減ったりなくなったりすることもある。そんな微妙なラインもあり、かなりまとまった額の税負担が見込まれていた。

一方、退職年に行使した場合、退職1年目は所得がそれほど高くはないため、ストックオプションの利益相当額を低い所得税率で計算することができる。また、配当控除も併せて考えると、控除しきれなかった所得税の還付も最大限の活用ができそうだ。(こちらは住宅ローン控除と違い、所得税で控除しきれなくても住民税からは還付されない。)

退職後の国保の保険料だけでなく、在職中のストックオプションの税金も考慮した場合、保険料27万円増くらいなら元が取れそうで、また補助や保養所等のメリットもあるため、2年目も保険料は高いけど任意継続を続ける方がよさそうとの結論になった。任意継続の上限が廃止になったのが本当に痛い。