令和2年分の確定申告が2月16日から開始された。緊急事態宣言の延長もあり確定申告会場の混雑を回避するため、昨年と同じように今年も確定申告の期間が延長されている(期限は4月15日まで)。また、会場で申告相談をする場合は入場整理券が必要となるようだ。私も毎年この時期はふるさと納税の控除や配当控除を行うために確定申告書を作成して提出している。
配当金に対する課税方法は3つある。給与所得などと合算して申告する総合課税制度、株式などの売却損益と通算して申告できる申告分離課税制度、すでに特定口座で配当金に対する税金が源泉徴収されている場合は申告をしなくてもよい申告不要制度がある。これらは申告者が自由に選ぶことができ、申告者の一番有利になる申告方法を選択してよいことになっている。
総合課税を選択した場合は給与所得などの他の所得と合わせての申告となるため、配当金にかかる所得税の税率は課税所得に応じた税率(累進課税)となる(住民税については一律10%となる)。所得税率は5%から45%まで幅があるため、自身の課税所得をみて総合課税を選択すると得になるのか損になるのかを判断することになる。総合課税を選択すると配当控除を行うことができるため、所得税だけを考えれば課税所得が900万を超えない限り(所得税率23%以下)は得することになる。配当控除とは簡単に言うと受け取った配当金の10%(住民税の場合は2.8%)に相当する額の税金が戻ってくる税額控除だ。生命保険料の控除のような所得控除とは違い住宅ローンの控除と同じ税額控除となるので、その金額がそのまま戻ってくる。
申告分離課税を選択した場合は税率が一律(所得税は15%+復興特別所得税、住民税は5%)となるため、給与所得などの他の収入がどんなに多くても配当金にかかる税率は変わることがない。また、株式などの売却損益と通算して申告ができるため、もし株式で売却損がある場合は損益を通算して申告することで既に支払い済みの税金から還付を受けることができる。ただし、申告分離課税を選択した場合は配当控除は行えない。
ほとんどの人は申告しない申告不要制度を選択していると思う。特定口座で源泉徴収ありの場合は、配当金が支払われるときに税金が徴収されるので特に何か特別な手続きも必要なくそのままなにもしなくてよい。税率は申告分離課税と同じ税率となる。申告をしなかった場合はもちろん株式との損益通算も配当控除もできなくなるが、所得があったものとはみなされないので、もし被扶養者で所得がこれ以上あると扶養から外れてしまい困ってしまうような場合は申告しないことを選ぶほうがいい。
私が確定申告で選択しているのは総合課税である。私の年収だと配当控除を行えば申告分離課税や申告しないよりも支払う税金が少なくなるからだ。株式譲渡益には配当控除のような控除がないので、もし株式で売却損があったとしても配当金と損益通算させるようなことはしない。株式の売却損は株式の売却益だけで通算させるのが一番だと思っている。
一見するとよいことばかりの配当控除だが、住民税については逆に支払う税金が多くなってしまう。総合課税の住民税の税率は10%、一方、申告分離課税では5%となっている。住民税の配当控除で戻る税額が配当金の2.8%のため、実質7.2%の税率となってしまい申告分離課税と比べて2.2%高くなる。また、所得が増えることで国民健康保険料や他の何かの負担が上がることになるなどの思わぬ副作用があるかもしれない。ところが、実は配当金や株式譲渡益の課税方法は、所得税と住民税でそれぞれ異なる方法を選択できる。
一昔前までは所得税で選択した課税方法がそのまま住民税でも適用されるのが当たり前だったのだが、数年前から所得税と住民税で異なる課税方法を選択できることが明確化された。つまり所得税は総合課税を選択して配当控除を受けて、住民税は申告不要制度(または、申告分離課税)を選択することで税率を5%にできる。配当控除で住民税が不利になってしまうことや、配当所得を申告して別の負担が増えてしまうことなどの影響を考えなくてもよくなったのだ。どの課税方法を選ぶのかを申告するやり方は自治体によって異なるようなので住んでいるの市役所などの市民税課に電話して聞くのが一番早いだろう。「株式の配当金ですが、所得税は確定申告で総合課税を選択しました。住民税は申告不要制度にしたいのですが、どうすればいいのでしょうか」と聞けば手続き方法を教えてくれるだろう。
(追記)
令和3年分からは確定申告時に「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」の欄に「〇」を記入して提出すれば、わざわざ役所にやり方を確認したり書類を揃えて提出したりする必要もなく、申告不要制度を利用することができるようになった。
