それは、暑い夏のできごとでした。
1人でドライブに出発、その日は、富士山の裾のをぐるっと、一周するのを目的としていました。

山梨県のとある町に入ったとき、赤信号で止まっていると、
トントン、トントンと、窓をたたく音に驚かされました。
振り向くと1人の老女が助手席側の窓越しにこちらを覗いていました。
人の良さそうな老女でしたので、少し安心して、窓を開けて話を聞くと、
隣の町まで乗せていって欲しい、というのです。
隣の町は目的の方向ですし、こんな暑い日、
老人が外を歩くのも辛いと思い、
快く乗せてあげることにしました。
米パンの裏側 ※イメージです

走り出すと、老女は、隣町へ行く理由を話し出したのですが、
これがまったく不思議な話しなんです。

それは、

その老女の隣町に住む友だちが、昨日の深夜、自分のところに訪ねてきて、
「今、自分は死んだところだから、
 明日の通夜に来てくれないか

と言ったというのです。

それで、これから、その友人の家へ行くところらしいのです。
そんな事ってあるんですか?と聞くと、老女は、この辺では、よくある話しだというのです。
その他にも、地方の慣習など興味深い話をしてくれましたが、その不思議な話のことが、どうも気になって、他の話は記憶には残りませんでした。

2、30分ほど走って、隣町に入ってから、
「そこで降ろして欲しい」という場所で、老女を降ろしました。
ドアを閉め、いざ出発しようとすると、
窓越しに、お礼に饅頭を私に渡してくれました。
で、手を振りながら、車をスタートさせたのですが・・・・

走り出して、すぐミラー越しに後ろを見ると、
いないんです。・・・あの老女が・・・

米パンの裏側
すぐ車を止めて、探せば、近くにいたかもしれませんが・・・
その時は、そのまま振り向きもせず、
アクセルを踏み込みました。