浅草
尾張屋 本店(蕎麦)
浅草雷門から田原町へ向かう雷門通り沿いにある老舗蕎麦店、尾張屋本店。
観光客で賑わうエリアにありながら、昔ながらの落ち着いた空気が流れる一軒だ。
この日は昼過ぎの訪問で店内はほぼ満席。
それでも何とかテーブル席に滑り込み、まずは瓶ビールで一息つく。
休日の昼飲みらしい、ゆったりした時間の始まりだ。
アテには玉子焼きと揚げ茄子を注文。
先に出てきた揚げ茄子は、素揚げのシンプルな一品ながら、皮のパリッとした食感と中のとろりとしたコントラストが心地いい。
これがまた酒を進ませる。
ビールから冷酒へとシフトし、選んだのは八海山。
すっきりとした飲み口が揚げ物との相性も良く、昼飲みの満足度を一段引き上げてくれる。
続いて登場した玉子焼きは、見た目も味わいもだし巻きそのもの。
添えられた大根おろしに醤油を少し垂らし、ふんわりした玉子と一緒に頬張ると、これまた間違いない酒の肴だ。こうした“蕎麦屋の一品”が充実しているのも、この店の魅力のひとつ。
そして締めは、やはり定番の天ぷらそば。
大ぶりの海老天が2本乗る贅沢な一杯で、衣と海老のバランスも絶妙。
サクッとした食感と海老の旨味がしっかり感じられる。
やや細めでコシのある蕎麦に、鰹出汁の効いた温かい汁がよく絡み、酒を楽しんだ後の身体にじんわり染みる。
途中で七味や刻みネギを加えて味の変化を楽しみつつ、最後まで飽きずに完食。海老天2本の満足感はやはり格別だ。
酒、肴、そして蕎麦。
すべてがきちんと揃った、浅草らしい王道の一軒での昼飲み。
気取らず、それでいてしっかり旨い。
そんな時間を過ごせる店だ。

【浅草と蕎麦】
浅草といえば観光地のイメージが強いが、実は“蕎麦どころ”としてもかなり奥深いエリア。江戸の昔から続く老舗が多く、下町の空気とともに本格的なそば文化を味わえる。
まず象徴的なのが、並木藪蕎麦。雷門のすぐ近くにあり、1913年創業の名店。濃いめのつゆとキリッと締まった細打ちのそばが特徴で、「これぞ江戸前」という味わい。冬場は温かいそばに揚げたての天ぷらを合わせると、しみじみとした旨さが広がる。
一方で、落ち着いた雰囲気でゆっくり楽しみたいなら、尾張屋も外せない。創業は江戸時代という老舗で、ボリュームのある天ぷらそばや天丼が人気。観光客だけでなく地元の常連も多く、浅草らしい賑わいの中でしっかり食べたい時にちょうどいい。
さらに少し足を伸ばせば、風情ある町並みの中に点在する個人店でも、個性的な一杯に出会える。観光の合間にサッと立ち寄るもよし、昼飲みついでにそばで締めるのも浅草流。
浅草のそばは、単なる食事というより“江戸の文化そのもの”。歴史ある街並みを歩きながら、香り高い一杯をすすれば、その魅力がより一層深く感じられるはずだ。