私が生まれてはじめて買ったピアノ本は、某有名ピアニスト監修の入門書でした。それにモーツァルトの【トルコ行進曲】の楽譜が載っており、初心者なりに悪戦苦闘しながら練習を重ね、そこそこ弾けるようになることができました。
それからの私は自分のピアノの才能に酔いしれまくりました。クラシックの名曲中の名曲であるモーツァルトの【トルコ行進曲】をピアノをはじめて1ヵ月かそこらであっという間に弾けるようになってしまったのですから!
が、それからしばらくたって、私の優越感は音を立てて崩壊することになります……。
ピアノ2ヵ月目から、私はキーボードを買い変えました。それに収録されていた【トルコ行進曲】を聴き、さらに楽譜を見て愕然としたのです。自分が弾ける【トルコ行進曲】とまったくちがったからです!
さらに、話はまだ終わりではありません。それからしばらくたってからプロのピアニストが弾く【トルコ行進曲】をヨウツベで見たのですが、新しいキーボードに収録されている【トルコ行進曲】にも出てこないメロディーが多くあったのです。
これで明らかになったのは、私が最初に読んだ入門書の【トルコ行進曲】は、原曲とはまったく別の曲といっていいくらいちがう曲だったということです。そんな曲を弾けるようになって優越感に浸っていた自分が恥ずかしくてしかたありません。
また、非常な面倒臭さに襲われました。せっかく弾けるようになったというのに、実はそれはメチャクチャ簡単なお子様用のアレンジで、原曲の楽譜が別に存在するということになってしまうと【1からやり直し】になってしまうからです。
初心者用のやさしいアレンジを考えることはいいことだと思います。しかし、やさしいアレンジの楽譜しか紹介しなかったら、それを読んで練習した人はそこから先に進みにくくなってしまいます。よってピアノ本にはやさしいアレンジの楽譜だけでなく、超難しい原曲の楽譜も載せるべきなのです。