日本のミドルブロッカーは、得点力が低い。と言われることが多いですが、果たしてそうなのでしょうか。

たしかに、海外にはブラジル・タイーザ選手やセルビア・ラシッチ選手、アメリカ・アキンラデウォ選手ら強力な選手がいて、日本人にはない高さとパワーがあります…と、思わされています。
その為、日本人MBは、その部分で戦うことをやめてしまったのではないでしょうか?
木村沙織選手が代表入りした頃から見てみると
たとえば柳本JAPANが発足した2003年〜04年のアテネオリンピック。MBには吉原知子さん、大友愛さん、杉山祥子さんがいてどの試合でもスピードを活かしながら打点を落とさない、強烈なスパイクで得点を多く取り活躍していました。
2006年頃には、荒木絵里香選手がスタメンを獲得し、08北京オリンピックまで杉山祥子さんとともにブロックでも活躍し、日本の“得点源”として大活躍しました。多治見麻子さんや庄司夕起さんらもいたこのポジションは、当時はむしろ、サイドの選手よりも決定力のあるMBが、流れを1本で切ってくれる頼りになる存在でした。
眞鍋JAPANとなった2009年以降はどうでしょうか。ここでは、怪我により出遅れた荒木選手よりも存在感を示したのが、井上香織さん。井上さんはスパイクというよりは、ブロックの面で活躍が目立ちました。時には1試合で10本もシャットアウトする試合もあり、その貢献度は高かったですね。2010年に大友(当時山本)さんが復帰した際には、荒木選手・井上さんと3人で熾烈な争いをし、当時キャプテンだった荒木選手が控えにいるという、頼もしいポジションとなりました。
ところが2011年、前年レギュラーの井上さん大友さんが怪我による離脱。日本は新たなMBが必要となりました。そこで出てきたのは、当時代表ではOPだった山口舞選手と、身長187㎝の岩坂名奈選手です。山口選手は、攻撃の多彩さは光りましたが、ブロックの低さが露呈し、2011年ワールドカップの大会中にOPに戻りました。岩坂選手はこの大会、サーブやブロックに大活躍。クイックでも、竹下佳江さんのセットを思い切り打ち切って得点を重ねていました。
2012年は、前年活躍した荒木・岩坂選手の他に、怪我から復帰を目指す大友さん井上さん、さらには平井香菜子さんも加わり、5人で争われました。ロンドンOQTでは荒木選手とともに岩坂・平井選手が、オリンピック本番では大友・井上さんがそれぞれ活躍しましたが、2010年までの存在感はなかったように感じられます。
その後、2013年以降は、日本チームの課題として、ミドルブロッカーだけでなく、真ん中のポジションからの攻撃力の強化を図る作戦が考えられました。2013年は裏MBの位置にOPの選手を置くMB1。迫田さおり選手や長岡望悠選手が入って、センターやライトから攻撃し、相手の守備を混乱させました。
2014年は、それをさらに進化させたハイブリッド6。セッター以外の位置にポジションに区別なくスパイカーを配置する戦略で、セッターの宮下遥選手(と中道瞳さん)もセンターブロックを務める布陣でした。
どちらの作戦も、各スパイカーがスパイクで得点を重ねるという点では成功したと思えます。元々MBではないポジションの選手は、低いクイックは打てないので、センターセミやライトオープンといった攻撃で、スパイク力を活かしたからです。
しかし、ブロック、更には後ろのディグとの関係は、崩壊といっても過言ではありませんでした。普段真ん中のポジションでブロックに跳ばない選手が真ん中で跳ぶというのは、横移動も含めあまりに難しいことだからです。また、MBの選手よりも背が低いこともあり、コミットした後など跳び遅れた際に上から打たれるケースも多く見られました。
この2年間で明らかになったことは、スパイカーに打ち切らせれば(たとえ今いるMBよりも背が低い選手のスパイクであろうと)、決め切ることができる。不慣れなポジションでブロックを跳ぶ選手がいると、ディグを含めたディフェンスが崩れる。ということでした。
ということは、普段からセンターブロックをしているミドルブロッカーの選手が、スパイクを打ち切ればいいということです。
具体的には…
しっかりと助走を取って、肘の下がらない最高打点でスパイクをできる。
コースの打ち分けをきちんとできる。
この2つが最低限できればいいということです。
ということは、セットも…
打点を活かせる高めのセット。
コースを打ち分けられるだけのブロッカーとの距離。
これらが必要になるということです。
2015年、代表のMBは、オープン攻撃を得意とする大竹里歩選手、リーグでもはバックアタックまで打つパワフルMB島村春世選手、宮下選手のチームメイト山口選手でした。
ところがセットは元に戻り、山口選手以外は打ち切れないボールが多く、大竹選手や島村選手の良さが活きない場面が目立ちました。ファーストタッチやセットが低いことで、スパイカーは開くこともできず、勢いの死んだ低いクイックはことごとく止められ、拾われました。また、3選手ともブロックではコミットする場面が目立ち、横移動が間に合わないということもあり、ブロックでの見せ場もあまり見られませんでした。
そんな不安のみを抱えた状態で迎えた2016年。リオデジャネイロオリンピックを目指したOQTでは、出産を経て帰ってきた荒木選手がブロックで貢献。打ちきれないプッシュが多くありましたが、格下チームが多かったこともあり、なんとか攻撃でも得点を重ねました。しかし強豪ひしめくオリンピック本番では、その置き去りにしていた課題が露呈します。
強豪相手にMBを使えない。
たまにしか使わないからミスを恐れてトスが低くなる。
その低いクイックは止められる。
決まらないから使えなくなる。
という悪循環が生まれたのです。
荒木・島村選手も呼んでいたと思いますが、低いトスを脱却できなかった日本チームにとって、MBは決まらない存在で、宮下選手が勝負所で使う信頼感はなかったのかなと思います。
今後日本が強くなる為には…
MBを使うことが勇気ある選択であってはいけません。使えることが普通でなくては。
セットも、スパイカーが打ち切ることを前提に改善しなければ、MBをやりたがる選手が減ってしまうでしょう。また、それに応えられる選手が必要です。海外の選手は、MBでも当たり前のようにオープントスを打ちきれますし、バックアタックまで打てます。バックアタックは背(打点)が高い選手にこそできるプレーなので、できないプレーではないでしょう。それから、日本人MBは海外のMBに比べてネット際に寄っています。スパイクの助走はクイックや移動攻撃の助走、ブロックの助走、更には打つポジションにしてもです。もう少しネットから離れたところでプレーするようにしないと、身長の差を埋められるジャンプの高さは生まれません。
高いセットを打てる選手が入れば、セッターも打点を活かそうとしてくれるはずです。また、現在日本のトップでプレーしているMBは、おそらくまだ荒木絵里香選手でしょう。
たしかに荒木選手のスパイクやブロックは素晴らしいですが、ベテランで出産を経て帰ってきた荒木選手に勢いでも何でも勝る選手が出て来ないと、この先もMBの得点力不足は解消されないでしょう。
次は地元開催の東京オリンピックです。
時間はあるようでないですが、頑張れ日本!!