むろらんが亡くなる1ヶ月前、2016年9月。
2週間ほど、とある治療施設に泊り込みをしていた時のこと。
この1か月は、
がん末期症状特有の悪疫質症状が顕著に現れていた。
みるみるやせ細り。
全身が土気色に変わり。
日に日に各所に痛みを訴え。
手持ちのカードを切っても切ってもどうしようもなく。
痛み止めの薬を飲んでもその場しのぎでしかなくて、
すべてが後手後手に回っていた頃だった。
それまで1ヶ月毎に検査し、
抗がん剤の副作用以外の自覚症状は全くなかったのが、
「なんとなく」の痛みを訴え、
腫瘍マーカーが一気に上がった頃から、
2~3日毎、そして1日毎と、様子がめまぐるしく変わっていく。
そんなむろらんの状態をみて、わたしは、焦った。
そんなわたしの焦りを、むろらんは敏感に感じとっていた。
そんなむろらんを感じて、わたしはまた隠そうとする。
それはそれは、不自然なほどに。
あれは、治療施設に面会に行って、一緒の夕食を終える頃。
この頃のわたしは、
自分の不安をむろらんに覚られてはいけないと、
話題は日常の、ごくありふれたものとなっていた。
たわいのない会話をさえぎって、おもむろに、むろらんがこう言った。
「ここ最近、焦ってない?」
ギクリとした。
「え?」
言葉を発しながら、眼が泳ぐ。
むろらんは泳ぐわたしの瞳をとらえて、一気にこう言った。
「めろらんは、
『こいつはもう死ぬんだな』って
思ってる。」
心臓がドクン、と鳴った。