彼のことを忘れれば、楽になれる。
それは確かに、違いない。
ん?
でも、ちょっと待って。
私、むろらんを忘れたくない。
彼を忘れてしまったら、
死してもなおこんなに愛おしく思える程、
わたしの人生において大切な存在を、
消してしまうことになる。
そんなのは、絶対に嫌だ。
想う力。
想い起こすことは、
その存在を肉体を超えて存在する、
を現実に創造すること。
それが、霊魂との交信というものらしい。
お墓参りの時に、故人を思い出す。
仏壇や祭壇に手を合わせる時に、故人を思い起こす。
そんな些細な瞬間にも、故人と霊的に繋がるものらしい。
ということは、その存在を覚えている人がいなくなれば、
その『存在』は本当に消えてしまうわけで。
私が思い出すことさえなくなってしまえば、
むろらんは、2度死ぬことになる。
そんことは、させたくない。
だって、わたしがまだ生きているのだから。
生きている限り、忘れてなんかやるものか。
あれ?
――――― これって、
わたしの方がむろらんに、
呪いをかけているのかもしれない。