きのう、花組バウホール公演『殉情』-はなこちゃん(一之瀬航季さん)主演-のライブ配信を観ました。

 

 

はなこちゃん初主演おめでとうございます。

 

はなこちゃんは、『はいからさんが通る』新人公演主演が幻となり、悲しく悔しい思いをされたことと思います。

 

今回の主演には、ご本人はもちろん、多くの方がうれしい思いをされたのではないでしょうか。

 

 

ホッティー(帆純まひろさん)版も配信で観ましたが、とても良かったです。

 

その時も書いたのですが、原作の『春琴抄』はそれほど好きではなかったし、昔絵麻緒ゆうさん主演の映像を見た時は、恐がりで痛がりの自分には、目をつくシーンがすごくリアルに感じられて・・・。ちょっと苦手意識も持っていました。

 

 

それが、先日の配信では、舞台に惹きつけられたのです。

 

特に、ホッティーの佐助がすばらしいと思いました。

 

あまりにもホッティーが役にピッタリのように思えて、はなこちゃんはどのように演じるのか気になったりもしました。(謎の親心照れ

 

もちろん、はなこちゃんも魅力・実力とも十分な方だと思っているのですが、持ち味的に、ホッティーの方が佐助に合うように、わたしには思えたのです。

 

 

きのうの配信を観て、はなこちゃんの佐助もすばらしいと思いました。

 

ホッティーの佐助と全然違うし、佐助らしいかと言われたらちょっと違うようにも思うのですが、わたしはとても感動しました。

 

 

はなこちゃんの佐助は、体格がいいこともあって、丁稚にはちょっと立派すぎるように感じることもありましたが、おおらかで、あたたかい雰囲気でした。

 

笑顔が多く、とにかく春琴の側にいることがうれしくてたまらないように見え、1幕最後の歌のところなど、恋する気持ちが前面に出ていたように思います。

 

そんなはなこちゃん佐助が、物語の終盤にチラッと見せた鋭い目つきにはドキッとしましたし、思いを定めた時の顔付きには迫力がありました。

 

目をついた後、春琴に話しかけ、いつもの笑顔を見せる頃から、わたしは、涙が止まらなくなって・・・最近では一番泣きました。

 

かわいそうだからではなく、感動の涙だったと思います。

 

 

春琴を演じたのは、あわちゃん(美羽愛さん)。

 

わたしが今まで知っていた春琴とは、ちょっと感じが違い、彼女も、佐助が好きという気持ちが、わかりやすく感じられたように思います。

 

高慢というより、自分の気持ちを素直に表すことのできない、等身大の女の子のような感じも受けました。

 

佐助が目をついたあとの台詞「うちにはお前しかおらへんのや、お前しか」は、心に響くものだったと思います。

 

 

二人が、よろけながら、手を取り合い、階段を上っていく姿は、とても純なラブストーリーのようでした。

 

そして、佐助は、心から幸せなのだと感じました。

 

 

ホッティー&ことのちゃん(朝葉ことのさん)版と、はなこちゃん&あわちゃん版は、それぞれの良さがあり、今回、配信とはいえ、二つの『殉情』を観ることができて、本当によかったです。

 

 

今回の『殉情』は、“バウ・ワークショップ”と銘打って、Wキャストになっているお役が多いです。

 

 

一之瀬版の役替わりで印象に残った方を何人か

 

芸者お蘭のいとちゃん(糸月雪羽さん)

 

ホッティー版のすみれちゃん(詩希すみれさん)が、ちょっと凄みさえ感じる美しさで、歌もお芝居もすごくよかったので、いとちゃんのお蘭にも注目していました。

 

いとちゃんのお蘭も魅力的だと思いました。良い意味で普通っぽい感じと柔らかな色気があり、歌もお芝居も安心して観ていられる感じでした。

 

 

現代の若者のユーチューバーのマモルは、かがみーくん(鏡星珠さん)。自然な演技で台詞もわかりやすかったです。

 

マモルの友人のユリコは、可愛いゆゆちゃん(二葉ゆゆさん)。

 

ゆゆちゃんも素直な演技で、かがみーマモルに対しての気持ちの向け方や横に並んでいる感じがごく自然でした。

 

 

他の若手の方々もいきいきと演じられていたように思います。

 

 

二つの『殉情』で役替わりがなかった方々は、みなさん味のある演技でした。やはり、後の公演の時の方が、わたしが見慣れたせいもあるのか、より役に馴染んでいたように感じました。

 

 

利太郎・・・ゆかちゃん(峰果とわさん)

 

利太郎は大変重要な役どころだと思います。ゆかちゃんは、ホッティー版を観たときも存在感があったけれど、はなこ版のときはより役に馴染んで、さらに大きく深くなっていたように思いました。

 

利太郎はアホぼんで、アドリブも入れつつ笑いをとっています。だけど、よくある「アホやけどかわいい」人ではなく、どこか猫をかぶっているような、怒らせたら何をするかわからないような、じわじわと滲んでくる怖さを感じました。

 

春松検校(舞月なぎささん)に破門を言い渡され、「おぼえてけつかれ!」と急にキレる様子、いやがる春琴に言う「別に減るもんやないし」という台詞の下品な調子の上手さ(ほめています。利太郎の人間性がよくわかる)

 

春琴との最後の稽古の場面では、ゆかちゃん利太郎の様子の変化によって、どんどん緊迫感が高まっていったように思いました。

 

 

安左衛門・・・びっくさん(羽立光来さん)

 

春琴の父で、薬問屋鵙屋の主人。びっくさんは、大店の主人らしい風格と鷹揚さがあり、素敵だったと思います。

 

娘の春琴を思う気持ちが十分に感じられ、佐助に対する態度もあたたかさがありました。

 

 

しげ・・・あおいさん(美風舞良さん)

 

春琴の母。きりっとした台詞回しが気持ちよく、娘を思いつつも、じめじめせず、実際的に事を進めていく様子がよかったです。

 

しっかり者ですが、思いやりや愛情も十分あり、春琴のことを「あの子の笑顔をもういっぺん見てみたい」という台詞には泣けました。

 

 

春松検校・・・ふじもんさん(舞月なぎささん)

 

かなり年配、しかも目の見えない役と言うことで、ご苦労があったと思うのですが、お蘭を諭すところは印象的でした。はなこ版では、利太郎との掛け合いの間合いもよくなっていたように思います。

 

第二幕最初の元旦の場面では、手子舞がきりっとかっこよかったです。

 

 

石橋教授・・・まいこつくん(紅羽真希さん)

 

現代パートの郷土史研究家。眼鏡と口ひげがよく似合っていました。現代パートはやりすぎてはいけないと思うのですが、落ち着いた紳士でした。

 

 

番頭・・・じゅんじゅん(高峰潤さん)

 

ホッティー版の時、素敵だなあと思ったのですが、今回も良かったです。

 

番頭はんは仕事一途で厳しいのですが、けして情のない人ではないような気がします。男っぽくて、声もすてきでした。

 

 

 

今回の『殉情』二作品とも、「交わす言葉もなく~」で始まる歌が、とても心に沁みて・・・

 

佐助と春琴の愛の世界を表現していて、こんなに良い歌だったのかと、今さらながら思いました。

                                                     

 

明日11月7日が千秋楽。

 

どうか、無事に公演が終わり、はなこちゃんはじめ出演者の方々の笑顔が輝きますように