宝塚グラフ11月号(通常版)の表紙を見ているとき、“悪魔の美しさ”という言葉が浮かんできました。

 

グラフ11月号は、サヨナラ特集ということで、明日海りおさんの美しいお顔がアップで表紙となっています。背景は白、少しだけ写っているお洋服も白、明日海さんはまるで発光しているようです。“悪魔”とはまるで結びつかないはずなのに…

 

たぶん、美しすぎたからでしょう。「恐ろしいほど美しい」って本当にあるんだと思いました。

 

 

『悪魔の美しさ』は1949年のフランス映画で、主演は名優ミシェル・シモンとジェラール・フィリップ、監督も有名なルネ・クレールです。

 

古い映画が好きなのと、ジェラール・フィリップが出ているということで、DVDで見ました。

 

ジェラール・フィリップは、フランスの俳優で、優雅な二枚目スター(今は死語ですね)であると共に、フランス国立高等演劇学校を優秀な成績で卒業した舞台人でしたが、36歳の若さで亡くなったそうです。

 

宝塚ファンで有名であった今年亡くなられた作家の田辺聖子さんがお好きだったと記憶しています。もちろん、わたしはリアルタイムでは知りません。ただ、往年の美しき映画スターといえば必ず名前の挙がる方ですし、有名な映画にも数多く出演されていますから、興味を持ち、いくつかの作品をDVD等で観ています。

 

『パルムの僧院』『赤と黒』『危険な関係』などは、宝塚でも上演されていますね。

 

 

この映画に興味を持った理由がもう一つあって、それは、原作がゲーテの『ファウスト』だということ。

 

同じく『ファウスト』を原作とした宝塚作品『天使の微笑・悪魔の涙』は、わたしが最初に宝塚に夢中になったきっかけとなった作品なのです。

 

劇場では観ていなくて、初見はWOWOWの放送でした。その頃CSのスカイステージはまだ放送されておらず、ビデオも通常公演では販売されていなかったと思います。(関西テレビは公演の放送をしていたようですが、わたしの住んでいる地域では見れませんでした。)

 

『天使の微笑・悪魔の涙』は、剣幸さんがトップスター時代の月組作品で、小池修一郎先生の大劇場デビュー作品です。

 

舞台は世紀末のウィーン。剣幸さんの情のある演技と相手役こだま愛さんの可愛らしさに加え、朝凪鈴さんや紫ともさん、羽根知里さんなど、娘役さんの役も魅力的でした。宝塚らしく、“愛”を大切にした演出(原作をアレンジ)も感動的で、残念ながら東京公演はなかったようですが、小池修一郎先生にとっても、その後の活躍の礎となった作品だと思います。

 

そして、この作品の悪魔(堕天使)メフィストフェレス役だった当時2番手の涼風真世さんに魅せられてしまいました。

 

涼風さんの美しさと持ち味がよく生かされた役で、本人にとっても思い入れのある役だったらしく、退団前のバウ公演で、メフィストフェレスを主人公とした作品『ロスト・エンジェル』が上演されています。

 

『ロスト・エンジェル』は、時代設定を現代にするなど、わたしにとって少し残念な作品でした。雪組初演前に『エリザベート』の音楽が一部使われているなど、興味深い点もいくつかあるのですが、詳しく書くと長くなるので、またの機会としたいと思います。

 

『天使の微笑・悪魔の涙』を今の花組で観てみたいと思いました。ファウストとメフィストフェレスを明日海さんとれいちゃん(柚香光さん)で演じたら素敵だったでしょう。(もちろん舞台は世紀末のウィーンで)。二人の美しい悪魔が観たいので、役替わりでお願いします。それぞれで演出を変えなくてはいけないのでしょうから全く現実的ではないですが。華ちゃん(華優希さん)もマルガレーテはよく似合ったと思います。今となっては、想像の世界で楽しむだけですが…

 

 

わたしが“悪魔”を連想したのは『シャルム!』の主題歌のせいもあるかもしれません。

 

9月に宝塚大劇場公演を観に行ったとき、青薔薇&シャルムの主題歌CDを買いました。

 

わたしは田舎に住んでるので車は必需品です。通勤ももちろん車で30分ほどかかるのですが、その間『シャルム!』のプロローグの曲をくり返し聴いています。

 

れいちゃんが ♪あなたは、まるで悪魔♪と歌っているのをずっと聴いているのです。

 

加えて、メモリアルブックのみりれいの、まさに悪魔的なツーショット。

 

 

わたしは『青い薔薇の精-A Fairy Tale』の世界はとても好きだし、登場人物も魅力的だと思うのですが、明日海さん演じるエリュと主題歌『The Blue Rose~幻の中に咲く花~』があまりぴったりこないのです。

 

歌詞はとても素敵だと思います。一つの歌として聴くと、とてもいいと思うのですが…

 

♪ 深い霧の中 (Misty)

   密やかに咲く (Secret)

   背徳の花 禁断の花

   青い薔薇 Blue Rose 

 

   夢と現の間に咲く 幻の花

   許されぬ花 Blue Rose 

 

明日海さんによく似合っていると思います。でも、実際に観たエリュには歌詞のような背徳や禁断の香りがあまりしないのです。

 

もっとも、ストーリー的に、シャーロットとの関係で背徳や禁断の香りがしたらかなりマズいと思うので仕方がないとは思います。

 

♪ 光失い 孤独の中

      生きる

    この定め Blue Rose

 

孤独感もあまり感じられないような…だって、エリュの側には精霊さんたちがたくさんいて、何だか楽しそう。その中で、エリュはわがままな王子様という感じで、それはそれで魅力的ですが。

 

他の歌はよく作品世界に合っていると思いますし、この歌にしても合わないというわけではありません。

ただ、この歌詞をあらためて聴くと、もっと別の世界が合うのではないか、と言う気がふっとしました。

 

この『The Blue Rose~幻の中に咲く花~』は、相手役をれいちゃんにしたシチュエーションの方がぴったりくるような気がします。

たとえば…(ごめんなさい、妄想につき以下自粛します)

 

 

歌劇11月号も明日海さんサヨナラ特集です。わたしは友の会で定期購読しているので、早く手元に届いて読みましたが、まだ発売前のようなので、詳しくは書かないようにしたいと思います。ただ、歌劇の明日海さんの写真もすごく魅力的だと思いました。そして『明日海りおを送る言葉』の中には、とても印象的な言葉がありましたので、それについて、また書きたいと思います。

 

 

フランスで“悪魔の美しさ”とは、“あっという間に過ぎ去る、火花のような、若さの美しさ”を指すということを読んだことがあります。そういう一瞬の美しさではなく、年齢と共に熟成していく美しさをめざしましょう、みたいな感じの文章でした。

 

そういえば、映画『悪魔の美しさ』でも、若さは重要なモチーフだったような気がします。

 

そういった意味ではこの言葉は明日海さんに失礼だったかもしれません。明日海さんの今の美しさは、持って生まれたものに、ご自分で努力して得られたものがプラスされたものだと思うからです。(だから不快に思われた方がいたら申し訳ありません)

 

でも、今のわたしは“悪魔の美しさ”に惹かれます。一瞬の煌めきにすべてを賭けることがあってもいいじゃないかと思います。

 

そして、その一瞬の美しさが永遠に人の心に残ることもあり得るのではないかと…

 

宝塚には“悪魔の美しさ”がよく似合うと思います。