ごきげんよう。栗毛馬です。
榮太樓總本舗本店限定販売の「玉だれ」を買った話の続きです。
希少な「玉だれ」、その味は?
先に食べ始めた老婦人の様子をこっそりうかがうと。
「…」
無言です。しかも、顔つきが妙です。
「どう?」
訊いてみると。
「…先入観を植え付けてしまうから、何も言わないでおくわ。早く食べてみて。食べて、自分で判断するのがいちばん」
何やら思わせぶりではありませんか。
(どうやら、イマイチらしい…)
緊張しつつ、一口食べると。
まずはふわもよん、と求肥。
さらに歯を食い込ませると…ジャリジャリねちょ。うっすらと山の芋の風味。それをかき消すように、ツーンとわさびの香り。
おお…!
勝手に思い描いていた味とは、ずいぶん異なります!
中は、白あんにわさびを練り込んだようなものだと思っていました。
まったりと薄あまい中にほんのり涼やか山葵の風味…と。なんとなく。
それが、ジャリ(シャリかもしれません)ねちょ。
芯は、どちらかというと、とても柔らかな飴に近いのかな…?
妄想に近い想像ですが、砂糖と水、芋なんかを混ぜ合わせ、わさびを入れたら、よく練って空気を含ませ、棒状にする。くっつかないように砂糖をまぶして、求肥に包んだらこうなる…のでは、という感じ。
「思っていたのとかなり違う…。中は白あんだと思っていたから」
とつぶやくと、
「やっぱり!同じこと思ったわ。私はこのジャリジャリがちょっとね。それに、わさびが人工的な香りがしない?」
と、老婦人。
「いや、静岡産の生わさびが使われているはずだよ。それが自慢なんだもん」
「でも、強すぎる気がするわよ」
「新鮮なのを贅沢に使っている証拠では?」
「そうかしら?」
…残念ながら、我々の口にはあまり合わなかったようです。
「高かったのになぁ…。ま、いい経験にはなったよ。気になってたことが解決して嬉しいよ。食べなかったら一生気になり続けるだろうし。この色!日本の美だよ」
老婦人に指し示すと。
「そうね、この色、ちょっとやそっとじゃ出せない色でしょうね…。もちろん、天然の色でしょう?」
「当然でしょ!わさびの色だよ!」
胸を張って即答しましたが、ふと嫌な予感がして、箱の裏を確認すると。
着色料(クチナシ、紅花黄、V.B2)
お、おう…。
いやいや。
クチナシも紅花も、天然由来の。
それに、わさびだけで色着けしたら…。
食べることなんかできないくらい、辛くなってしまうのではないでしょうか!
残りは明日食べることにして、くるくると袋の入り口を丸めてクリップで留め、箱へ戻そうとしましたが、入りません。
おかしいなと中を探ってみると、御菓子の栞に引っかかっていたのでした。
おやおや、気づかず捨ててしまうところでした!!
記されていたのは、玉だれの由来などでした。
おお…、初代が考案した、歴史ある逸品だったのか…!
江戸時代にこんな繊細なものを創り上げてしまう発想の豊かさ、新しさ。
…凄い!
希少性と独創性、歴史の重み。
連綿と受け継がれてきた、初代の魂。
現金なもので、ありがたみが急上昇!
さらに、
本場天城のわさびを用いた芯を求肥で包んだ、清楚な外観と上品な甘辛さは、特に茶人に親しまれ他に類を見ないその独創性に、永くご好評をいただいております。
だって。読み上げて、
「茶人には大好評らしいよ」
締めくくると、
「あらまー」
と、老婦人。
「俗で野暮天な我らには難しかったのかも」
「明日は心していただきましょう」
悪くなるといけないので冷蔵庫で保存し、翌日は食べる少し前に出して、室温に置いておきました。
遠く江戸時代に思いを馳せつついただいた、少しだけひんやり感が残る玉だれは、常温で食べるよりもおいしく感じられました。
慣れると、独特の味わいが病みつきになるようで、一口ごとにおいしさが増すような気がします。
一度にたくさん食べるより、少しずつ、回数を分けて食べたい。
切る大きさは、六等分がいいのかも。
少しずつ、上品に味わうのがよろしいのかと。
食べる前は、玉だれって小さいなあ、細いなあ…と思いましたが、味わうにはこの細さがベストです。
ごんぶとの玉だれ…、鼻がツーンとして大変なことになりそう。
リピートするかは正直わかりませんが、人生で一度は味わった方がいいお菓子ではないかと思いました。





